おいしくて安全な学校給食の運営、食に関する様々な課題に対応する力を養うため食の指導の充実等、学校給食に求められる多くの課題解決に向け弊社は2月1日「学校給食向上セミナー」を都内で開催。栄養教諭・学校栄養士、給食施設・運営に係る教育委員会の担当者が参加した。
学校給食の現状と課題について文部科学省から基調講演、続いて給食費の公会計化、給食センター整備計画、調理現場の衛生管理、ICT活用による食の指導など、実施運営上の課題に対する事例報告が行われた。さらに残菜記録作業やアレルギー指導・対策の効率化、調理場の環境整備などの課題解決のメーカー提案が、会場で説明・展示された。
食の指導に動画やデジタル教科書を活用して情報を発信するケースが増えている。東京都台東区立千束小学校栄養教諭の善方祐望氏は「ICTを活用した食育・栄養指導」をテーマにICT活用事例について報告した。
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千束小学校は児童数204名の小規模校で、校内の合言葉は「自分ごと」。給食指導も栄養教諭や担任だけに任せず、全校一丸で指導する。非常勤職員も給食をサポートするため、給食の時間に担任が食の指導を行う余裕ができている。
給食におけるICT活用には、給食メモの電子化が挙げられる。給食メモを読んでもらうための工夫で、給食メモに記載したQRコードを読み込むことでPDFファイルが見られるようにした。給食の時間に放送委員会が給食メモの内容を読み上げ、同時に電子黒板にPDFを映すことで児童の理解度が深まった。
また、食育に関する動画を作成し、給食の時間に公開している。スマートフォンの動画編集アプリ「InShot」で作成し、MicrosoftのTeamsで公開。当日午前中に動画の構成を考え、12時までにアップロードしている。
動画の公開は2020年度から開始。当初はPowerPointで作成していたが、動画が保存された共有フォルダにログインする手間がかかるため教員間の活用が進まなかった。21年度2学期から共有場所をTeamsに切り換えたが活用率は低いままだった。しかし給食通信に動画のQRコードを載せたところ活用率が高まり、22年6月に活用率100%に達した。
台東区の連携都市・茨城県筑西市の農家から区内の児童に毎年梨が届く。これを配るだけではなく栽培農家を訪問し、筑西市の魅力や梨の出来具合を紹介する動画を作成。農家の生の声を動画で伝えることができた。
動画を活用するメリットとして「短い時間でも多くの情報を伝えられる」、「すべてのクラスで均等に食の指導ができる」、「箸の使い方や魚の食べ方について教えやすい」などが上げられた。
月に2~3回は教科関連献立として各学年の学習内容と関連した給食を提供。指導用資料の作成にはデジタル教科書を活用している。2年生・国語「いなばの白うさぎ」では物語の舞台になった鳥取県の郷土料理。4年生・国語「ごんぎつね」では物語に出てくるイワシを使った給食を提供した。1日2回、授業を観察。学年だよりや年間指導計画をチェック、担任に相談し学習内容の把握に努めている。
「ICTを使用することが目的にならないように」注意すること。教員や子供の意見に耳を傾け、子供たちが何を求めているかを確認しながら、給食に反映させることが大切だと言う。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年2月19日号掲載