おいしくて安全な学校給食の運営、食に関する様々な課題に対応する力を養うため食の指導の充実等、学校給食に求められる多くの課題解決に向け弊社は2月1日「学校給食向上セミナー」を都内で開催。栄養教諭・学校栄養士、給食施設・運営に係る教育委員会の担当者が参加した。
学校給食の現状と課題について文部科学省から基調講演、続いて給食費の公会計化、給食センター整備計画、調理現場の衛生管理、ICT活用による食の指導など、実施運営上の課題に対する事例報告が行われた。さらに残菜記録作業やアレルギー指導・対策の効率化、調理場の環境整備などの課題解決のメーカー提案が、会場で説明・展示された。
過去には年20回以上発生していた学校給食での食中毒だが、対策が進められ今日では年数回程度に減少している。(一財)東京顕微鏡院学術顧問の伊藤武氏は「衛生管理基準に則った給食調理場の衛生管理の重要性」をテーマに、食中毒対策の変遷を語った。
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1996年にO157による食中毒が全国的に発生。学校給食でも7校約1万人の患者が出たことを受け、1998年に文部省(当時)が「学校給食衛生管理基準」(「基準」)を制定した。HACCPの考え方に従ったもので、2009年に学校給食法に取り入れられた。
HACCPでは食品内に含まれる、健康に被害を及ぼす可能性がある物質を危害要因とする。生物的危害要因は食中毒を起こす原因となる微生物など。化学的危害要因は残留農薬、重金属、ヒスタミン、食物アレルゲンなど。物理的危害要因は機械・器具の破損物や包丁の破片などがある。
危害要因を除去または人体に被害を及ぼさないレベルまで低減するためのポイントが重要管理点(CCP)となる。危害要因に対して重要管理点を定め、学校給食で以下の取組が進められた。
加熱して生物的危害要因を死滅させる▽10℃以下の低温で生物的危害要因の増殖を防ぐ▽細菌が増殖しないよう調理後2時間以内に提供する▽前日調理を禁止する▽使用水については作業前後に残留塩素を確認する。
ウェルシュ菌は100℃で4時間、嘔吐型セレウス菌は100℃で30分間加熱しても死滅しないが、これらの菌は10万個以上に増殖しないと食中毒を発症しないため、2時間以内に喫食して菌を増やさないことがポイントとなる。
高度な衛生管理を進めるため「基準」には以下の条件を明記。①施設・設備の充実②作業区分の明確化③作業動線図④ドライシステムまたはドライ運用⑤作業台の高さ⑥エプロン、包丁、まな板の使い分け⑦食材、器具器材の洗浄、消毒⑧従事者の衛生管理(手洗い)・健康管理⑨専用トイレとトイレの洗浄・消毒⑩そ族および昆虫対策⑪廃棄物および排水の取扱い⑫食品取扱者の教育・訓練
「作業区分の明確化」は、「基準」以前はラインを引くだけで明確な区切りは無かった。現在は検収室、食品保管室、下処理室などの「汚染作業区域」と、調理室、配膳室、食品・食缶の搬出場などの「非汚染作業区域」に分けられ安全性が確保されている。「エプロン・包丁・まな板の使い分け」は以前の使い回しから、検収用、下処理用、調理用で使い分けている。
新型コロナが流行した3年間は手洗いと消毒が徹底し、食中毒は減少した。しかし最近は手洗いの徹底が緩み、ノロウイルスに増加傾向が見られる。今後も十分な衛生対策を取る必要がある。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年2月19日号掲載