10月20日、大阪市内で第102回教育委員会対象セミナーを開催。3つの教育委員会が端末の共同調達、ゼロトラストネットワーク、AL教室の学びを、2つの中学校がICTを活用した授業改善について報告した。
加古川市立加古川中学校は2021・22年度、市の指定を受け、スマートスクール推進モデル校としてICTを活用した授業デザインの研究に取り組んだ。今年度はさらなる進化を図っている。同校は21年度に学校情報化優良校に認定。22・23年度はパナソニック教育財団の実践研究助成を受けている。
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研究を進めるにあたり、校内でスマートスクール推進委員会を立ち上げた。管理職、教務主任、ICT担当、生徒指導、進路担当で構成され、今年度からは生徒会担当も加わって、生徒の主体的な活用を図っている。
端末は毎日持ち帰り、健康観察や課題は家から提出。養護教諭が健康診断の注意事項を動画で配信したり、生徒が部活動で活用したり、授業外の活用も進んでいる。
学習場面に応じたICT活用の研究から始め、全ての場面で活用する授業が2年間で出来上がった。全教員が参加する校内公開授業は今年度も継続しており、3回目となる。担当教科に分かれて互いに授業を見合い、意見交換を行っている。
今年度は特に学習面での深い学びを目指し、MEXCBTの活用を中心とする個別学習とGoogleツールを活用した協働学習に焦点を絞って進めている。
毎日10分の朝学習にMEXCBTを活用。今年の6月時点で活用実績が全国1位となった。今後は学習ログを使った生徒のふり返りや学び直しにつなげていきたい。
授業スタイルは探究のプロセスを取り入れた。生徒が大人になった時にも使えるスキルを身に付けさせるため、全校統一でGoogleツールを活用するよう、教員の共通理解を図っている。
数学「正の数と負の数の掛け算」では、問題を出し合い、それをグループ分けしながら規則性を自分たちで発見する学びに取り組んだ。英語では、物語をリスニングして絵で表現。班ごとに聞く部分が異なり、作品をつなげると1つの物語になるという協働的な学びを展開した。体育では当初、実技の時間が減るのではないかという不安の声もあったが、動画で自分の姿を客観視することで上達が早くなったと聞いている。特別支援学級でも校外とのオンライン交流など活用が進んでいる。
欠席・遅刻連絡やアンケートはFormsを活用しており、保護者への連絡はすべてペーパーレス化している。朝の電話対応は大幅に減少した。進路希望調査や個別懇談の日程調整もFormsを使っているが都度作成が必要なため、カレンダーのスケジュール予約機能への移行を検討中だ。
Classroomは全学級、全校生徒、各部活動、全教職員や推進委員会などの職員関係と様々なパターンで作成。資料の共有や欠席者への連絡もスムーズに漏れなく行える。オンライン会議や研修もClassroomを活用している。
2023年度全国学力・学習状況調査によると「学習の中でICT機器を使うのは勉強の役に立つと思う」が94・8%とほぼ全生徒が有効に使っている。反面、学習者用デジタル教科書の使用頻度は授業中50%、家庭学習25%と活用が進んでいない。試験的に1週間と期間を定めてデジタル教科書しか使わない授業を行ってみたが、すぐに紙媒体の教科書に戻ってしまった。活用方法を模索していきたい。
研究指定校の2年間で生徒も教員もICTの操作に慣れ、GIGAスクール構想のスタートラインに立てた。教員の意識改革を図りながら、教員がファシリテーターとなる授業研究、ICT活用の体系化・日常化を一体的に進めていく。
【第102回教育委員会対象セミナー・大阪:2023年10月20日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年12月4日号掲載