10月20日、大阪市内で第102回教育委員会対象セミナーを開催。3つの教育委員会が端末の共同調達、ゼロトラストネットワーク、AL教室の学びを、2つの中学校がICTを活用した授業改善について報告した。
彦根市教育委員会(小学校17校・中学校7校)は4つの小学校と全中学校のPC教室をアクティブラーニング教室(AL教室)として整備し、今年度から活用を始めている。学校ICT推進課の島野主査が経緯と成果について報告した。
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2021年度に行った市内の学校へのPC教室使用頻度調査によると、中学校は技術科や部活動での使用があるものの、小学校ではほとんど使われていない状況だった。
そこで、小学校のPC教室をAL教室として再整備し、中学校は機器の強化を図ることとした。新事業ではなく、PC教室や普通教室用PCの更新費用から予算を確保。異なるリース期間のものは無償譲渡することとして2023年3月に照準を合わせて取り組んだ。
小学校の整備方針は1人1台端末をより活用できる多目的教室。低学年の子供たちにもAL教室を積極的に使ってほしいとの思いがある。協働的な学び合いがしやすいよう自由にレイアウトを組み替えられる机や、机にも椅子にもなるスツールを設置。柔らかいスツール上に端末を置いて床座すれば、1年生でも端末を使いやすく落下防止にもなる。後ろの壁面は全面ホワイトボードとし、電子黒板機能付きのプロジェクターを設置した。
中学校は、1人1台端末のスペックでは動作困難な、より高度なプログラミング機器を活用できる環境を検討。動画編集やeスポーツなども行える単体GPUを搭載した高性能なワークステーション各校40台とゲーミングチェアを導入した。
高性能PCは小学校にも各校10台整備。教育用ドローン、3Dプリンター、オンライン配信設備も小・中学校共通だ。プログラミング教材「レゴエデュケーションSPIKE」は各校18セット導入した。
初めて教室に入った子供たちからは「わあ、すごい」と歓声が上がった。オンライン配信の仕組みを活かして、企業と連携したプログラミング学習を行った際には、教室の前後の壁に配信画面を映し出した。どちらを向いてもよく、子供たちが集中して自ら考えながら取り組んでいる様子が印象的だった。
市のマスコットキャラクター「ひこにゃん」が教室を訪れた様子を教育用ドローンで撮影し、公式チャンネルに掲載するなど取組の発信も積極的に行っている。
整備にあたって大切にしたことは「何を整備するか」ではなく「何をできるようにするのか」。学校現場の声を聞きながら整備を進めた。
端末で作った作品を印刷したいという教員の要望でプリンターも整備。PC教室で子供の端末から印刷が可能になった。
1学期末に小学校児童対象に行った調査では「大きなスクリーンが見やすい」「机が五角形でグループにしやすい」などの感想があり、「普通教室よりも集中できる」83%と好評だ。教員も「話し合いや教え合いがやりやすい」100%で、「交流に適している」「グループの組み換えや移動が容易で学び合う活動や立ち歩きができる」といった感想がよせられた。
AL教室でグループ活動に慣れることで、普通教室でも協働的な学びに取り組みやすくなるといったAL教室の学びが普段の学びに還元されていく効果も期待している。
活用が始まって5か月が経った。現在の課題は教員の活用格差だ。新たなPC教室は教員にとっても動画編集やWeb編集などが行いやすい環境である。様々な情報を発信する1つの場所という感覚を広めて、どんどん使ってもらえるように働きかけていく。
【第102回教育委員会対象セミナー・大阪:2023年10月20日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年12月4日号掲載