11月10日、仙台市内で第104回教育委員会対象セミナーを開催。稲垣忠教授・東北学院大学は端末の日常的な活用を、岩沼市教育委員会はDXの取組を、岩沼小学校は授業改善を、北海道教育大学付属函館中学校は学習履歴の利活用について報告した。
北海道教育大学附属函館中学校は2013年度より1人1台端末活用(Android端末)がスタート。17年度からはBYODでChromebookを導入している。数学科の有金教諭がオンラインで登壇。今年度の研究主題「学習履歴の利活用による学びの改善」について報告した。
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本校はClassroomをプラットフォームとして、資料や課題の配布・提出・返却を行い、CBTや各種アプリも連携して点数やコメントなどの学習履歴を蓄積している。教員は全生徒の成績を一覧表示でき、ルーブリック評価も可能だ。
スプレッドシートを用いた自己調整学習シートも学習履歴として残している。見通し、実行、ふり返りの一連の流れに沿って生徒が記述式で書き込むもので、生徒はシートを使って自分の学びを評価・改善し、教員は主体的に取り組む態度の評価に役立てている。クラウドで共有されており、他者参照ができる。
数学科ではGoogleサイトも活用。Classroomやワークシートなどをまとめて掲載すると、視覚的に情報がわかりやすく、CBTを埋め込んで問題と点数を残すなどICTのデータ蓄積も可能だ。
生徒個人のGoogleサイトも作れるようテンプレートを配布しており、生徒はワークシートからポイントを抜き出した「板書まとめ集」を作るなど活用しやすい形にカスタマイズしている。
学習履歴の利活用の場面は単元計画に意図的に組み込んでいる。1単元の1節終了後にCBTを実施し、その結果と単元の学習履歴をもとに自己調整学習シートを記入する。CBTの結果から自分の弱点も分かりやすく、学習履歴を活用することでより客観的な指標で自己調整学習シートに記述できる。
レポート課題にはルーブリック評価とコメント機能を活用。教員のアドバイスや、それに対する自分の考えなど、今までは残せなかったものも蓄積できるようになった。
学習履歴を上手く残すためにどのように授業を改善していくかも重要な観点だ。
CBTはFormsで行っておりフィードバックがすぐにできる。解答はスプレッドシートに同期されるため加工が可能で、正答率も瞬時にわかる。アンケートも簡単に行えるようになった。
授業の冒頭5分に復習や予習の確認テストをCBTで実施。その場で結果を返却し、生徒は間違えた問題のメモを残すなどして活用している。教員はつまずきの多い部分を一覧で確認して本時の授業に生かしている。
板書も簡単に残せるよう、Web会議システムの画面共有機能を用いて端末の画面を黒板として活用。生徒は端末で板書を見ることができ、家庭からも授業を受けることができる。板書はすべてドライブで共有しているため写す必要はなく、生徒は、端末で配布したワークシートに教員の説明のポイントや他の生徒の意見などを書き込む。
授業で最も変化したと感じているのは発表の場面だ。グループでJamboardやスプレッドシートを共同編集して、全体発表の際は無線で大型テレビに表示。前に出る必要がなくなった。常に共有されているため他の班の内容を参考にでき、発表を行わずとも、自分たちの内容を再考してより深い学びにつなげている。
共同編集したスプレッドシートなどの成果物は定期テストの問題として出題すると、生徒のやる気につながる。授業やテストといった普段の学習活動の中で学習履歴を活用する場面がないと子供の動機にならず、履歴を残しただけで終わってしまう。活用場面を設定して生徒自身が「ふり返りをしよう、履歴を残そう」と思うことが重要だ。
長期休業中の課題は提出期限を2段階設定して継続的な取組につなげ、間違いの多い問題は解説動画をClassroomに投稿して学習改善を促した。動画は繰り返し確認できる点がよい。
【第104回教育委員会対象セミナー・仙台:2023年11月10日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年12月4日号掲載