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教育ICT

“子供が”授業でICTを”日常的に”活用するには DXが進む学校と停滞する学校の違い<東北学院大学 教授 稲垣忠氏>

2023年12月5日
第104回教育委員会対象セミナー・仙台

11月10日、仙台市内で第104回教育委員会対象セミナーを開催。稲垣忠教授・東北学院大学は端末の日常的な活用を、岩沼市教育委員会はDXの取組を、岩沼小学校は授業改善を、北海道教育大学付属函館中学校は学習履歴の利活用について報告した。


東北学院大学 教授 稲垣忠氏

東北学院大学 教授 稲垣忠氏

ICTの効果的な活用方法」を尋ねられることは多い。特にICT活用の進んでいない学校や教育委員会ほど効果的かどうかを重要視しているように感じる。

効果の有無は授業設計や教材研究次第だ。GIGAスクール構想は「教員が一斉指導で効果的に使う」ためのものではない。いつどのように子供に使わせるのかを教員が考えているうちは子供の道具にならない。子供が選択・判断できる学びへと転換する必要がある。

端末の日常的な活用については「StuDXstyle」等のWebサイトにも事例が多数掲載されている。課題を感じているのであれば校内研修等で日常利用のイメージを持つことが重要だ。

2つのアプローチで授業改革

これまでの授業に活用場面を当てはめているだけでは授業改革にはならない。教育現場におけるICT活用レベルを示すSAMRモデルのうちテクノロジーに置き換えるだけの「Substitution(代替)」の段階は「頑張って使ってみたけれど、ない方がよい」という結果になりがちだ。例えば、クラウド上で子供の意見を集約しても、教員がその意見を全て処理するのでは授業は変わらず、むしろ情報量が増えて処理しきれなくなるからだ。

Modification(変容)」「Redefinition(再定義)」の段階に到達するためには、授業観や学習観の転換が必要だ。

ではどのような授業を目指すのか。

大きく2つのアプローチがある。1つは教科の学びを探究的に進める方法。子供たちの探究する姿を軸にして授業を作っていく。

もう1つは単元の自由進度化。個別最適な学びの姿の1つである。

研修の要望が最も多いのはPBLを用いた探究型の授業デザインだ。「情報活用型プロジェクト学習」の研修では、情報の収集・編集・発信の流れで単元を構成する。教員がどう授業を組み立てるかではなく、子供の探究を支え、引き出するための手立てを考えていく。

■家庭学習で情報収集 授業では整理・分析

リーディングDXスクールである仙台市立錦ケ丘小学校は探究的な学びに取り組んでいる。5年社会「情報産業と私たちの暮らし」では、学習問題「いろいろな情報がどのようにして私たちの元に届いているのか」について、家庭学習で情報収集をした後、グループごとにまとめて発表する。教科書は一単元分を自由に見てよく、調べてきたことをもとに自分なりに追究したい課題を作る。課題作成の段階で相当量の情報をもとに考えている。個々で進められる学習は授業外の時間も使い、授業では協働しながら整理・分析していく。

6年社会「国の政治のしくみと選挙」では、学習の流れ・めあて・ルーブリックをクラウドで共有して学習をスタート。三権の役割をそれぞれの立場で情報収集し、Jamboardと思考ツールを使って協働しながら整理して考えをまとめて発表する。Wチャートやベン図を使いまとめ方も班ごとに工夫していた。

■単元計画を共有 体育も課題解決学習に

2021年度から宮城県の「個別最適な学びに関するモデル事業」に取り組んできた気仙沼市立津谷中学校は、個別最適的な学びと協働的な学びの「技」を整理した。

数学「比例と反比例」の学習では、スプレッドシートで単元計画を共有し、毎回生徒が目標を設定してふり返り、教員がフィードバックをしながら授業を進めていく。自由進度の場面ではレベル別の課題と探究レポートから選択して学習する。

理科の学習では「音の世界」と「力の世界」の2つの単元を合体させ、好きな場所で実験を展開。体育の器械運動も課題解決学習として探究レポートを作成していた。

自分で情報を収集し、グループで整理・分析しながら、自分の考えを作り上げていく力が情報活用能力である。どの教科でも探究的に学ぶ際の土台となる力であり、情報社会を生きていくために不可欠な力だ。

宮城県では情報活用能力を活動スキル・探究スキル・プログラミング・情報モラルの4領域で整理した「みやぎ情報活用ノート」を作成。活用スキルとはパソコン操作や文字入力だけでなく図書の利用方法、インタビューの仕方、アンケートの取り方など情報のインプットやアウトプットの方法も含まれる。プログラミングも部品に分けて機能を考えるシステム思考や情報と情報のつながりに気付くことなど国語の内容を含んでいる。

■共有体制で端末更新

文部科学省2023年度補正予算案では11台端末の更新について、都道府県で基金を作り共同調達で進める方策を示した。前回導入時には基礎自治体ごとに整備した結果、ノウハウやトラブル対応の知見の共有が進まず、活用が進んでいない自治体もある。端末予算は前回導入時より1万円多い55000円になったが、導入できるものは限られる。都道府県教委がリーダーシップを発揮し、自治体間の協力・知見の共有体制を構築することが急がれる。

【第104回教育委員会対象セミナー・仙台:2023年11月10日 】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年12月4日号掲載

 

  1. 東北学院大学 教授 稲垣忠氏
  2. 岩沼市教育委員会 副参事兼指導主事 加藤琢也氏
  3. 岩沼市立岩沼小学校 教諭 北澤直樹氏
  4. 北海道教育大学附属函館中学校 教諭 有金大輔氏
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