教育委員会対象セミナーを10月3日に熊本市内で、10月13日に金沢市内で開催。堀田龍也教授・東北大学大学院・東京学芸大学大学院、大久保紀一朗講師・京都教育大学教職キャリア高度化センター、4つの教育委員会と3つの小学校、中学校、高等学校が登壇し、次のフェーズに向けたICT活用について報告した。
五福小学校は今年度、熊本市教育委員会のSTEAM教育モデル校やリーディングDXスクールの指定を受けており、教育奨励賞(文部科学省後援、公益財団法人新聞通信調査会協賛)のメディアリテラシー部門で特別賞を受賞するなど先進的にICT教育に取り組んでいる。また、昨年度はApple Distinguished Schoolの認定を受け、CEOのティム・クック氏が同校を訪問。本認定は、国内では10校が認定されており、公立学校では初だ。今年度より同校に赴任した小田校長は昨年度までは熊本市教育センター所長の立場から同校の研究に携わっている。
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ICT活用の目的は機器を使うことではなく授業改善にある。
本校の研究構想は大きく2つ。1つ目は探究的な学びの土台となる、子供が学び取る授業の工夫。2つ目は各教科で身に付けた力を活かして実会社の問題解決に取り組むSTEAM教育だ。この2つを並行して進めることで、対話を通して協働的に学び続ける子供の育成を図っている。
各教科では、情報活用能力をベースにした探究的な学びのプロセスで各単元や1時間の授業を考え、めあてやふり返り、対話(アウトプット)を工夫している。
課題設定の場面では、単元を見通した構想案を作成して、単元全体を通して取り組むパフォーマンス課題を設定。1時間のめあては子供の実態に沿って「少しだけ難しい課題」を設定し、子供同士の対話を生み協働的な学びにつなげている。
ふり返りシートは共通で作成。端末により短時間でふり返りができるようになり、互いに良いところを参照し合うことで内容も充実してきた。
対話の場面ではシンキングツールやiPadのアプリケーションにより思考を可視化し、学習者の対話をつなげて相互作用を高めたり新しい考えを生み出せるように工夫。朝学習の時間は全学年でシンキングツールのスキルやタイピング力の向上にあて、学級間の差が生じないようにしている。
STEAM教育では、五福の街をテーマに6年間、系統的に取り組んでいる。各教科で身に付けた力を活かし、社会とリアルにつながりながら、探究的な学習が積み上がるよう、リアルな課題に系統的に取り組むこと、カリキュラムマネジメントを工夫し教科横断的に取り組むこと、情報活用能力をベースにした学習プロセスで進めることの3点を意識している。
生活科および総合的な学習の時間を軸に学年ごとに単元構成図を作成。カリキュラムマネジメントを行うことで教科のつながりを意識できるようになってきた。
例えば3年社会「町探検」で、総合的な学習の時間における課題を見つけたり、5年国語「和の文化」の学習をきっかけに町の魅力を伝えるCMを作り上げたり、6年国語「町の幸福論」の学習から新たな視点で校区の課題を発見して自分たちでできることを話し合っている。教員が教科のつながりを意識することで子供たちも教科と教科を結びつけて考えるようになってきている。
校内研修にカリキュラムマネジメントを位置づけ、1学期に実際に町を歩き教員自身が町のことを知る時間を設け、夏休みの研修では昨年度のものをもとにして計画をブラッシュアップしている。
市役所の都市デザイン課の職員から景観の取組を学んだり、大学生からプログラミングについて学んだり、プロの視点が入ることで子供たち自身がよりリアルな課題を設定するなど地域や行政、大学など学校以外の産学官の人材を積極的に活用することで子供の視野を広げ、専門性からの理解を深めることができている。
【第100回教育委員会対象セミナー・熊本:2023年10月3日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年11月6日号掲載