教育委員会対象セミナーを10月3日に熊本市内で、10月13日に金沢市内で開催。堀田龍也教授・東北大学大学院・東京学芸大学大学院、大久保紀一朗講師・京都教育大学教職キャリア高度化センター、4つの教育委員会と3つの小学校、中学校、高等学校が登壇し、次のフェーズに向けたICT活用について報告した。
熊本市教育委員会 教育センター副所長 吉田潔氏
熊本市(小学校92校・中学校42校)は2016年に発生した熊本地震からの復興をきっかけにセルラーモデルの端末(iPad)を導入し、コロナ禍ではいち早くオンライン授業に取り組んだ。教育センターの吉田副所長は、ICTを活用した子供の自律的な学びを実現する授業づくりへの支援について報告。
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2023年度全国学力学習状況調査によると、「ほぼ毎日」授業で端末を活用している割合は小学校98・9%、中学校86・0%。自分で調べる場面や教員と児童、子供同士のやり取りする場面の活用頻度も高く、端末が学習道具の1つになっている。端末を活用した学習環境がこれまでの学びを大きく変えていることは間違いない。反面、自分の考えをまとめ、発表・表現する場面や特性や理解度、進度に合わせて課題に取り組む場面での活用は小・中学校ともに課題がある。端末を活用して学びを深めることはもちろん、子供が使いたい時に使いたいツールを選択し自律して活用していくことを目指し子供が学び取る授業への転換に取り組んでている。
教育センターでは子供が主体となる授業づくりの研修サポートを充実させ、教員の指導力の底上げとさらなる向上を目指して全体的なレベルアップを図っている。
授業づくり支援訪問(学校訪問)では、めあて、ふり返り、対話の3つのポイントで助言や指導を行っている。
再任用指導主事による「ステップアップサポーター」は授業力を向上させたい教員からの希望を受け一対一で支援。
放課後にオンラインで開催する「TalkRoom」は、教科ごとに授業づくりについて指導主事に悩みを相談する場を提供。参加者同士で教材を共有したり、授業を作り上げたりと交流・協働の場にもなっている。
ICT活用に関する研修は「いろいろな人に、いろいろな機会に、いろいろな方法で」との考えの下、情報担当者・リーダー・管理職など各層に向けた悉皆研修や、各学校で実施するパッケージ研修、希望者を対象とした放課後オンライン研修などを繰り返し実施。教育センターのWebサイトやYouTubeでもさまざまな研修コンテンツを配信している。
今年度新たに企画した「教育の情報化DXパッケージ」は校長経験のある再任用指導主事による管理職向けの研修だ。教育ICT活用や学校マネジメント、校内研修のあり方について考えるもので現場ニーズも大きい。管理職の意識変化を支援できればと考えている。
学びの相似形を体験できる、教員参加型の校内研修も支援。教員が自分の授業を見つめ直し、課題を見つけ、解決に向け学び合う研修だ。
ICT支援員は22人。端末の管理・維持に加え授業や校内研修の支援も行っており、本市の教育ICT推進に欠かすことのできない重要な存在だ。現場の教員から要望を受けて、デジタル教材の開発も担っている。自分の気持ちを表現できる「心の数直線」は3年間で計423万6840アクセスあり、多くの授業で活用されている。
学校間・教員間格差を埋めるため、リーディングDXスクール事業により好事例の横展開を図っている。本市が目指す授業を取りまとめた実践事例集も公開。端末で音楽を作り校内のチャイムに活用した事例では、授業の学びが生活に生かされることで子供たちが学校のために取り組む意識の醸成も図られた。
【第100回教育委員会対象セミナー・熊本：2023年10月3日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年11月6日号掲載
