7月31日、徳島県徳島市内で第99回教育委員会対象セミナーを開催。講演内容を紹介する。
端末を活用した体育科の授業改善の取組を報告した宮本教諭は教職大学院を卒業して2年目。同校は22年度に徳島県のEdTechモデル校・推進校に指定されている。
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体育科の授業において、30人以上の児童が体育館で個々に活動する中で1人1人の「思考・判断」の意識を読み取ることは難しいと感じる場面があった。児童の発表やその時その時の反応の見取り、全体・個別指導での聞き取りからでは十分でなく、記述によるふり返りからは実際の運動のイメージが掴みにくい。児童にとっても次の課題設定につなげにくいという課題もあった。
そこで、端末を活用して児童の思考・判断の様子のリアルタイムな見取りや可視化ができないかと考え、第5学年体育科「跳び箱運動」で、児童が互いに活動を見合いアドバイスから新たな視点を得ることを目標に端末を効果的に活用した授業改善に取り組んだ。
学習支援アプリのモニタリング機能を使って指導や支援が必要な児童がヘルプサインを出せる仕組みを構築。適切なタイミングで指導が行えるようになり、授業中に自分から発言することが苦手な児童も教員を呼びやすくなった。児童が自分のタイミングで教員に助言を求めることができるため、試技を見直して必要な指導は何かを考え課題に迫った質問をする力がついたとも感じている。
動画撮影とワークシートによって授業内での児童の思考・判断の把握がしやすくなった。動画で試技を確認して気づきや考えを記入したり、互いに見せ合ってアドバイスし合うなど児童が思考する場面が増えた。撮影する際もカメラの位置取りやスロー機能など試行錯誤する様子が見られた。
ワークシートも端末上で配付・共有することで、授業中に書き込み、教員がリアルタイムに個々の見取りや助言ができる。「前転の練習のためのマットを設置してほしい」など、児童の意見を参考に必要な場を設定する判断材料にもなった。児童も互いに見合う場が増えることで課題解決のきっかけになっている。
ふり返りは朝の時間や宿題を活用。授業時間の枠を超えて自分のペースやタイミングで考察できる環境としたことで、工夫して言葉で表現しようとする児童の様子が見られるようになった。
動画を見ながらふり返るため具体的に次の時間の目標を決めることができ、思考・判断の言語化・視覚化に有効だった。休み時間に動画を見ながらアドバイスを求められるなど児童との授業に関する会話も増えた。
友達の動画を撮影しながら感じたことを動画に残したり直接伝えたりと児童同士の関わり合いが増えワークシートでも目線の角度や踏み切り位置など具体的に良い点を書き込み合っていた。友達の試技に関心を持ち良い点を探したり励まし合うことは知識の習得や思考の広がりにつながる。端末を活用することで自然と対話が増え、児童が自分の課題を深め広げることができた。
課題として考えを上手く言語化できない児童に対しヒントとなるワードを示すなどの支援方法の検討と、撮影し合う際に撮ってほしいポイントを明確に伝えさせ、より課題に沿った活動につなげたいと考えている。
【第99回教育委員会対象セミナー・徳島:2023年7月31日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年9月4日号掲載