7月31日、徳島県徳島市内で第99回教育委員会対象セミナーを開催。講演内容を紹介する。
今年度から昼間小学校に着任した中川校長は、3か月間の取組を報告した。今後のGoogleサービスの利用を踏まえ、前任校でのChromebook活用の経験をベースに、校内の様々な情報化を進めている。
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多様な働き方を実現するキーワードは「情報共有」だ。自分のスケジュールに応じて仕事をマネジメントできると教員の負担感は減る。職員室の連絡黒板をすべてディスプレイとし、連絡事項はすべてクラウド上で共有できるようにした。連絡黒板は職員室に行かないと確認できないが、クラウドで共有する自宅や出張先でも見ることができ心理的安心につながる。行事日程、出張や来校者予定、児童の欠席数などの情報がどこにいても確認できる。
教員はビジネスチャットも活用。電話は相手の時間に割り込むツールだが、ビジネスチャットを使えば自分のタイミングでいつでも見ることができる。教員に知ってほしい情報等のリンクを張ることで、管理職の思いの共有もしやすくなった。
保護者とはGoogleカレンダーで学校行事を共有している。夏休み中のプール開放予定は、Googleスプレッドシートを活用。保護者や児童は閲覧のみ、教員は編集可と権限を分けて使い分けている。
例えば理科の実験道具や家庭科で扱うミシンなど教科書に登場する初めての道具は丁寧に使い方の指導があり、その時期も決まっている。情報活用能力も同様にカリキュラムマネジメントのもと進める必要がある。小学校で最低限決めるべきは、文字入力指導の時期と方法、学習ツールの指導時期と段階、学び方のためのツールの利用経験の記録の3つだろう。
文字入力はローマ字入力を推奨したい。ローマ字は3年生で学ぶ内容だが学校の状況に合わせて前倒しも可能だろう。長期休暇も含め、自力で学習できる手段を用意することが重要だ。
写真撮影や録画機能など1年生でも身につけるべき力は多い。学ぶ内容が少ない1年生だからこそ、体験的に身につける内容に時間をかけることができる。自由な部分と指導するべき部分を明確にし、学校としてのカリキュラムに落とし込んでいくことが重要だ。
デジタルネイティブ世代に押さえておくべき指導事項にも注意したい。自動保存機能に慣れると保存を忘れてしまうことがある。シングルサインオンゆえに自分のアカウントを知らない児童も多い。社会でも通用する力を身につけさせるためにパスワード管理や変更方法の指導は必要だ。セキュリティ意識を高めるためにログアウトの意味も教えたい。共有を前提としたクラウド活用では公共性の意識を学ぶことも不可欠となる。
長時間勤務の弊害が授業に及ぶとする調査結果がある。教員が学び続けるためには時間的な余裕が必要だ。会議の時間は減らしても、研修の時間を減らすべきではない。ただし提案発表の原稿や指導案を何度も書き直すような研修は減らすべきだ。学びに向かう力が必要なのは子供だけではない。
そこで、教員がICTを活用する際の不安要素の払しょくのため、校内で使うツールを統一している。これにより授業方法が共有しやすくなり子供にとっても学び方を身に付けやすく活用能力の向上につながる。校内研修は特定の教科や学年で実施するものではなく全員で取り組める研究とすることで、学校全体で取り組むことができる。
研修や授業を「したくなる」ためのアフォーダンスの用意は管理職の仕事だ。光センサーを使って職員室からでも校長が電話しているかがわかる仕組みや個人面談の時間を知らせるオルゴールチャイム、体育館へのプロジェクターやBluetoothアンプの設置など「あったら便利」作りを積極的に行っている。
教員がいなくても学んでいける子供を育むために、自分で調べる場面や考えをまとめ、発表・表現する場面、児童生徒同士がやり取りする場面を生かした授業づくりを進め使いやすい学習ツールやICTスキルなど端末を利活用して学力の向上を図っている。3年生算数では児童がGoogleフォームに入力したふり返りに対する評価を共有し、どのようなふり返りの視点がA評価なのかわかるようにした。
【第99回教育委員会対象セミナー・徳島:2023年7月31日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年9月4日号掲載