教育委員会対象セミナーを7月7日、東京都で開催した。世田谷区教育委員会、鴻巣市教育委員会、流山市教育委員会が教育DX、STEAM教室、教育データ連携など新たな学びに向けた取組を、杉並区立松ノ木小学校の笠原校長は職員室と保健室のクラウド化、東京都立町田高等学校の小原指導教諭は情報Ⅰの授業と評価について報告。講演内容を紹介する。
東京都立町田高等学校(南斉道雄校長)で情報科を担当する小原指導教諭は、情報Ⅰにおける指導と評価の一体化の実践について報告した。
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本校は2018年度より学校独自に1人1台端末(iPad)を導入。21年度に東京都によるOffice 365の一括導入があり、「Classi」と「ClassiNOTE」も導入している。今年度からICT支援員が都の会計年度職員として配置され、大きな助けになっている。
21年度に公表された国立教育政策研究所の「指導と評価の一体化のための学習評価に関する参考資料」に基づいて、「努力を要する状況∥C」の生徒を「おおむね満足できる状況∥B」に近づけるためにどのような手立てをするのか、評価を指導に生かすことを意識して授業を進めている。
評価を行う流れの中で最も大事にしているのは年間計画。「どの単元に」「何時間かけるか」により評価も変わる。実時間にあわせて具体的な内容を割り振って大枠を作り、単元の時数や評価の観点、授業内容と細分化していく。
新学習指導要領の記述がほぼ評価規準となっており、そのまま流用できるため評価規準の作成が効率よくできるようになった。一方で、指導と評価の計画の重要性が増している。何をいつ、どう評価するのかを明確にする必要がある。
そこで、評価を行う際は4W1Hを意識して「何を(3観点のどれか・評価物は何か)」「いつ(どの時限か)」「どの場面で(1時間のうちどの場面か)」「誰を(グループ・個人)」「どのように(Aの状況とCへの手立て)」評価するのかを決めている。
指導と評価の計画は場面や活動によって、主に指導を中心に行う回と評価の記録を残す回とに分け、3観点のバランスを取りながら作成。ICTの活用により自宅から提出できるメリットを生かし、提出期限も工夫。挽回のチャンスを設けることで学びに向かう力の醸成を図っている。
評価の記録を残す回ではICTツールを用いて自動的に全員の記録が残るようにしている。提出がスムーズになり、教員はいつでも一覧して見やすく紛失等の心配もなくなった。指導中心の場合も、必要な生徒に対してはメモを残している。
ICTツールは複数活用。ClassiNOTEは全員の提出物を一覧でき、書き込みの内容も瞬時に分かる。予め設定したA評価との比較もしやすく、フォローが必要な生徒も見つけやすい。
評価の観点は、例えば「問題とは何かを理解し、自身に関わる問題を考え明確化しようとしている点を評価しようとした」など意図的に言語化するようにしている。
反転学習や定期テストの「ふり返り」を評価する場面では、アンケート機能を活用。キーワードを記入させポイントが理解できているか確認したり、苦手箇所の克服方法の設問は自己調整力を確認できる。
コンピュータの使い方やOfficeアプリに不慣れな生徒も多い。そこで、PowerPointで相手に提案したり、デジタルデータの加工などコンピュータやアプリ等の使い方を授業に組み込んで指導を工夫し、技能面の評価につなげている。
今期の定期テストでは20分ほどの解説動画を作成してテスト返却後に視聴する形とした。繰り返し解説する必要がなく、生徒の復習の様子を見取ることができ、欠席の生徒も視聴できる。
課題として「主体的に取り組む態度」の評価の難しさがある。特に行動観察による評価は一定の時間がかかる。評価の場面や評価ABの差を工夫しICTの活用も取り入れたい。学級閉鎖などによる現実的な評価の工夫も課題。複数回にわたる多面的な評価がより一層重要になっている。
【第98回教育委員会対象セミナー・東京:2023年7月7日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年8月7日号掲載