教育委員会対象セミナーを7月7日、東京都で開催した。世田谷区教育委員会、鴻巣市教育委員会、流山市教育委員会が教育DX、STEAM教室、教育データ連携など新たな学びに向けた取組を、杉並区立松ノ木小学校の笠原校長は職員室と保健室のクラウド化、東京都立町田高等学校の小原指導教諭は情報Ⅰの授業と評価について報告。講演内容を紹介する。
流山市教育委員会 指導課 課長 郡司美紀氏
校務をクラウド化し、学習のデータ連携に取り組んでいる流山市(小学校17校・中学校10校)は、｢流山市GIGAスクール構想｣の実現に向けて、①ガイドラインに準拠した整備かつクラウドバイデフォルトの考え方で整備、②校務用端末と児童生徒用端末とのデータ共有、③校務データと学習データの見える化の3点をポイントに環境を整備したと報告。
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従来は各学校内に校務サーバを設置しており、校務支援システムのセンター化もされておらず、教育委員会と学校間の情報共有やサーバの管理面に課題があった。そこで、校務サーバをクラウドへ集約することとし、Microsoft365 A5(以下、A5)およびMicrosoft Azureによるフルクラウド環境を整備。教育委員会と学校間での連携が容易になり教員の管理負担もなくなった。
校務系ネットワークは仮想デスクトップを用いてネットワーク分離を実現。多要素認証やデータの暗号化、無害化などガイドラインに示されている環境をすべてA5の機能で対応。生体認証(顔認証)でアクセスする認証型のセキュリティ対策により学校外でも高いセキュリティを担保でき、リモートワークなど教員が柔軟な働き方を選択できるようになった。
学習系ネットワークで運用される児童生徒用端末にはMicrosoft365 GIGA Promoを導入。これをA5と同一テナントにすることで、校務用端末1台で校務系・インターネット系・学習系へ接続が可能になった。
校務用端末から学習系ネットワークにデータをやりとりする場合は、自動でファイル暗号化される仕組み。セキュリティの強化とともに1台の端末で複数のことができるようになり、業務効率化につながっている。
本仕組みにより校務系データと学習系データの連携が可能となった。そこで、校務支援システムと学習ドリルの学習履歴、毎日の心の天気のデータを連携し、個人カルテを生成してダッシュボード化。不登校や児童生徒間のトラブルの早期対応につなげたいと考えている。児童生徒ごとに出欠や保健室利用の記録、学校生活や家庭の様子、児童生徒が入力する心の状態、成績や学習データなど様々な情報を一覧でき、管理職や養護教諭、教科担任等も含め、複数の目で多面的に児童生徒を見守ることができる。
心の状態は、天気のアイコンでの表現に加えてコメントでも入力でき、自分のことを話すことが苦手な児童生徒であっても表明しやすくなった。教員も児童生徒への声かけがしやすくなり、双方向のコミュニケーションが増えている。
導入時は利用環境が大きく変わるため教職員の負担が大きい。まずは教育委員会が理解しようと設計段階から打ち合わせにも積極的に参加して使い方や運用方法を1つ1つ学び、難しいと感じた点や困った点はICT支援員に学校へ伝えてほしいポイントとして共有した。コールセンターは校務支援システムとハードウェア関連の2種類を準備。ICT支援員を市で4人配備してどの学校にも週1回半日程度訪問できるようにするなどサポート体制を整え円滑な運用に努めている。
各校のICT教育推進リーダーが参加する年3回の研修は、特に中学校区単位の情報交換が有意義で、小・中学校が取組を共有して学習内容を見直すなどより良い小中連携の動きもできている。
運用を定着させ校務を効率化して教員の時間を少しでも創出していきたい。学習ドリル等の利用率を上げることでデータの蓄積にも力を入れ、データを使って子供たちの未来に向けた個別最適化の実現を目指していく。
【第98回教育委員会対象セミナー・東京：2023年7月7日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年8月7日号掲載
