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教育ICT

Well―beingの実現へ データ利活用はスモールスタート<渋谷区教育委員会 教育指導課 指導主事 北浦明人氏、教育政策課 教育ICT政策係 係長 竹澤悠人氏>

2023年3月6日
第95回教育委員会対象セミナー・名古屋

教育委員会対象セミナーを2月7日、名古屋市内で開催した。市原市教育委員会はGIGAスクールの環境づくり、渋谷区教育委員会は教育データの利活用、松阪市教育委員会はGIGAフェスタの開催、岐阜市教育委員会はデジタル・シティズンシップ教育、春日井市立藤山台小学校はクラウドと1人1台端末の活用について報告。当日の講演内容を紹介する。


渋谷区教育委員会 教育指導課 指導主事 北浦明人氏

渋谷区教育委員会 教育指導課 指導主事 北浦明人氏

渋谷区教育委員会 教育政策課 教育ICT政策係 係長 竹澤悠人氏

渋谷区教育委員会 教育政策課 教育ICT政策係 係長 竹澤悠人氏

全国に先駆けて教育データ利活用を実装している東京都渋谷区教育委員会(小学校18校・中学校8校)の北浦明人指導主事と竹澤悠人係長は、子供たちのWell-beingの実現のための取組を報告した。

…・…・…

■データ利活用で実現できることを明確に

 渋谷区は、データの利活用により、最終的に何を実現したいのかを明確にした。そこで「子供1人ひとりの幸せ(Well-being)」の実現」と方向性を定め、教員の子供理解に基づいた指導・支援と子供たちの学校満足度(QoL)の向上を図ることとした。

 具体的には学校ごとに保有している情報を教育ダッシュボードに集約。ライフログとスタディログの2つに分類した。ライフログでは、端末操作ログ等の定量的データに加え、子供の満足度や意欲、学習習慣の状態を中学生対象のアンケートにより測定した「hyperQUテスト」と、区独自の学校生活アンケートのデータも加えている。アンケートは「学校は楽しく過ごせているか」「からかわれたり、ばかにされたりすることがあるか」等の内容で、保護者にも周知して行った。

 教育ダッシュボードは学校全体、クラス単位、個人単位の3つのシートに分かれ、教育委員会と当該校の校長、副校長、担任等が閲覧できる。

 学校全体を俯瞰するシートでは、各クラスの状況やアンケートの回答推移をみて、クラス運営に役立てる。クラス状況シートは、異なるデータから複合的に集約し、多面的にクラスの状況を把握する。気になる子供は、個人状況シートで深掘りし、指導や支援に活用する。興味・関心や悩みの丁寧な見取りにより、課題の早期発見と、きめ細かな指導・支援につなげる。子供の思いや気持ちの変化を可視化することにより、より深い指導ができる。

■スモールスタートと逐次改善

 教育ダッシュボードの構成は、内製による連携データやレポートの追加もでき、目的に応じたデータ分析やAI等を活用できるようにした。GUI(GraphicalUserInterface)を取り入れ、プログラミングの知識がなくても開発できるようにしている。Power BIを活用し、取得したデータを分析、加工、グラフ化できるよう柔軟性を確保している。

 初めから多くの情報データを網羅しようとせず、「スモールスタートと逐次改善」を心掛け、データ利活用の目的に照らしながら優先順位をつけて進めている。今後は現場の実践によるフィードバックを経て、改善を進めていく。

■端末活用が長いほど授業の質が高まる

 教育データは、1日の端末の利用時間や、デジタル教科書、ソフトウェアの活用時間を可視化したレポートを作成して学校や教員の指導支援に生かしている。

 子供1人ひとりの幸せの実現のため、タブレット端末をどう活用してもらうか、学校にマネジメント意識を持ってもらうかを考えた。

 まず区内のデジタルツールや学習者用デジタル教科書の利用状況を調査し、活用が少ない学校やクラスについて分析。それをもとに指導主事のチームで改善策を考え、学校に訪問。授業観察や指導・助言を行った。また管理職にも端末の活用状況の把握を促し、教員が自主的に学ぶための研修も実施した。

 教育データを活用して分かったことは、端末の利用時間が長い学校ほど、個別最適な学びや、協働的な学びにつながる授業ができているケースが多く、ICT活用に比例して、子供1人ひとりの学びや授業の質の向上が見られた。

■子供のSOS 早期対応にも活用

 教育データを活用していくためには、学校のマネジメント体制の強化が重要だ。まず、校長の意識改革の研修と指導主事による学校訪問を計画的に行った。

 研修は2回に分けて実施。1回目は教育データの利活用と教育ダッシュボードの基本操作の演習で、2回目に自分の学校の教育データの利活用における実践報告を行った。報告では、生活指導主任が毎日教育ダッシュボードをチェックし、気になる子供について担任と情報共有するようになったことや、様子が気になる子供の検索履歴に危険ワードが見られた時は速やかにスクールカウンセラーにつなぎ、早期の対策を行った例があった。

 各学校の教育ダッシュボードは、指導主事も定期的に確認しており、子供のSOSを発見した場合はすぐに学校に連絡する。場合によっては学校に直接訪問し、早期対策に努める。

 教育ダッシュボード活用は、学校のマネジメント体制の強化につながり、校務の効率化に役立っている。今後も、学校と教育委員会が連携して教育ダッシュボードの更なる活用を進めていく。

【第95回教育委員会対象セミナー・名古屋:2023年2月7日 】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年3月6日号掲載

 

  1. 松阪市教育委員会 指導主事 脇清人氏
  2. 渋谷区教育委員会 教育指導課 指導主事 北浦明人氏、教育政策課 教育ICT政策係 係長 竹澤悠人氏
  3. 市原市教育委員会 指導主事 生田勲氏
  4. 岐阜市教育委員会 学校指導課 GIGAスクール推進室 主幹 栗本 光彰氏
  5. 春日井市立藤山台小学校 教諭 久川慶貴氏
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