教育委員会対象セミナーを10月14日、大阪市内で開催した。吹田市教育センター、豊田市教育委員会、枚方市教育委員会が新たなネットワーク構築や教育データ利活用について取組と今後の計画を、富田林市立第三中学校の宮本教務主任が学校の様子を報告。当日の講演内容を紹介する。
教務主任とICT担当を兼任している宮本礼子教諭は、学力向上を目指した1人1台端末の活用について報告した。
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本校は各学年3クラスずつで生徒数は320人。iPad第7世代をほぼ毎日持ち帰り、「文房具」のように使っている。
ICT活用のきっかけは2年前の休校期間に市教委で企画した学習動画作成に参加したことだった。
授業の録画やパワーポイントの動画作成など、「オンデマンド型」授業動画を作成するとともに校内研修も積極的に実施。ラインズeライブラリやGoogle Classroomなどの使い方について「こんなことができるのか」「面白い」など、教職員の興味は高まった。
1学期末に、Googleアカウントが発行され、iPadが先行して30台配備された。生徒用としては不足で、Wi―Fi環境も不十分であったころから教職員の活用から始まった。
まずは校務でiPadを活用。情報共有の様々な問題が解消され、教職員が「これは便利」と実感した。
「職朝連絡ボード」をGoogleドキュメントで作成し、朝の連絡事項を確認できるようにした。遅刻・欠席連絡ボードも作成し、連絡を受けた職員がGoogleスプレッドシートに書き込むことで、全体で共有できるようになった。今では保護者もGoogleフォームから欠席連絡をしている。
職員会議の資料もGoogleドライブ活用で完全ペーパーレス化が進んだ。
2021年1月から1、2年生に端末が配備され、授業活用が始まった。生徒には「端末はあくまで学習活動」であることを強調して説明。
授業での情報端末使用状況を毎時間調査し、教職員間で共有。自然と活用が進んだ。生徒の「目」が明らかに変わったことを強く感じた。
同年4月。大阪府でICTを推進活用する「スマートスクールモデル校」に本校が指定されなかったことはショックであったが、校長の「(富田林)三中は、モデル校のモデル校になろう」という呼びかけで、皆のやる気に火が付いた。
まずは情報発信を強化。本校ホームページ内に「今日の三中」を開設し、特にICT活用を中心に、市内や全国に向けて発信。
校内体制も強化。教務部内にICTチームを立ち上げ、ICT活用のエキスパート教員を各学年に1人配置。研修や生徒への指導など新しい活用に挑戦。「情報端末を使って楽しい、便利」と思える活用を広げた。
今年度は、生徒のICT学習委員会を立ち上げ、情報端末の使い方や啓発活動、校内のタイピング大会の開催など情報端末を活用した取組を自分たちで考えている。今後は情報端末使用ルールの見直し、アプリケーションのダウンロードの自由化などに取り組む予定だ。
情報端末活用をきっかけに生徒の学習意欲は2年間で約20%向上した。目指すものはICT活用を通しての学力向上だ。授業内のすき間時間にeライブラリやmikan等の学習アプリを活用。小テストではeライブラリも活用している。
自己肯定感、自己有用感を向上させるための工夫も必要だ。kahoot!などを使用すると、テストが苦手な生徒も上位になりやすく、授業前に自主的な勉強にもつながった。
ロイロノートによる意見交換の時間も意識してふやしている。無記名発表にすると躊躇なく自分の考えを述べられるようだ。褒められる機会が増えて自信がついたところで、徐々に記名発表に移行している。
自宅で料理動画を制作し、自主的に送る生徒もいる。
まだまだ工夫・改善する点が多いが、ICTを活用して改善する可能性がある。成果を見据え、学力向上につなげる。
【第92回教育委員会対象セミナー・大阪:2022年10月14日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年11月7日号掲載