教育委員会対象セミナーを10月14日、大阪市内で開催した。吹田市教育センター、豊田市教育委員会、枚方市教育委員会が新たなネットワーク構築や教育データ利活用について取組と今後の計画を、富田林市立第三中学校の宮本教務主任が学校の様子を報告。当日の講演内容を紹介する。
吹田市(小学校36校・中学校18校)では来年1月から新しい校務系ネットワークの運用が始まる。「これまで1台だった端末をあえて授業用と校務用の2台持ちにする」という整備方針は実際に使う教員からの要望を踏まえたものだ。同市教育センターの西口拓主査と、コンサル事業者のキートンコンサルティング㈱の松浦龍基代表取締役社長が説明した。
現在運用しているネットワークは、校務系(個人情報)、学習系(教材)、GIGAスクールネット(児童・生徒用教材)と3種類ある。教員用PCは校務系・学習系双方にアクセスできるため、校務系情報を誤って教室のプロジェクターに提示してしまうという懸念事項もあった。さらに1Gbpsの回線が行政系とも共用されているため、市内54校の端末稼働が活発になると、ネットワークが不安定になる。
また、働き方改革の観点から、今回整備する校務支援システム、教職員出退勤システム、学校徴収金システムを手間なく確実にデータ連携させたいと考えていた。
2022年12月末で、ほぼ全ての機器のリース契約が終了し、さらにセンターサーバのライセンスも終了するため、新たなネットワークを構築することとした。
検討にあたり、ネットワーク再構築のため公共分野専門のコンサルであるキートンコンサルティングとプロポーザルにより契約。教職員検討会で検討を進めた。
まず、現在の3系統のネットワークを整理。従来の学習系ネットワークをGIGAスクールネットに統合し、校務系と完全分離。結果、校務系(個人情報、出退勤、徴収金)とGIGAスクールネット(教材)の2つとした。
また、教職員PCは、ネットワークごとに配備。1人につき2台配備となる。これにより操作ミスによる個人情報漏えいリスクを防止。授業用端末は持ち運びしやすいものとし、校務用端末は操作がしやすいように画面の大きいものとし、ここで作成した教材を授業用端末に連携できるようにした。校務系の情報は仮想端末で閲覧できる。結果的に、高性能な端末1台を配備するよりもコスト減になった。
校務系ネットワークでは、統合型校務支援システム、教職員人事・出退勤システム、学校徴収金システムを一体的に整備。利便性が向上した。休暇申請は学校日誌へ反映するので転記が不要になった。
遠隔授業の仕組みも再整備。ハイブリッドで運用できるネットワークとした。
今後は幼稚園や乳幼児の健診データ等とのシステム連携も見据える。臨時休業等の緊急時には自宅からの接続も可能とする予定だ。
オンプレミスサーバ方式からクラウドサーバ方式とし、各学校の回線を新たに敷設して通信環境を増強。クラウドサーバ方式であれば、サーバ構築の初期投資を抑制できる。
文科省推奨のゼロトラストネットワークを導入する方針で検討を進めたが、教職員が操作に慣れることや他の教育委員会での導入実績を踏まえた結果、IAP、DLP、UEBAといった一部の最新機能については採用を見送った。できるだけ違和感なく、かつ利便性も落とさずに、豊富な機能と高いセキュリティを確保できる過渡期のゼロトラストネットワークを考えた。完全なゼロトラストではないからこそ強化すべきセキュリティがあるため、端末の2台持ちや仮想端末を導入することになった。
5年程度を目安に運用しながら、今後も再構築時点での最新・最適な構成を追い求める。
【第92回教育委員会対象セミナー・大阪:2022年10月14日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年11月7日号掲載