教育委員会対象セミナーを10月14日、大阪市内で開催した。吹田市教育センター、豊田市教育委員会、枚方市教育委員会が新たなネットワーク構築や教育データ利活用について取組と今後の計画を、富田林市立第三中学校の宮本教務主任が学校の様子を報告。当日の講演内容を紹介する。
枚方市教育委員会(小学校44校、中学校19校)は、1人1台端末の活用と働き方改革の推進について浦谷亮佑主幹(教育研修課ICT推進グループ)と伊藤閣啓主幹(教職員課 人事・総務グループ)が報告した。
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本市では、学期ごとに「情報端末をどれくらいつかっているか」等について調査している。それによると、導入当初から50%以上の学校が「授業で毎日活用」している。週3日以上の活用は8割以上である。
情報端末(iPad第7世代)のLTE版を導入しており、家庭で充電する運用で、当初から持ち帰りが基本である。これが、活用が進んだ理由として大きいのではないかと考えている。
AIドリルも今年度、実証を行い、次年度には全小学校に導入予定だ。
保護者への連絡は主にミルメール等を利用。また、各校の保護者や地域の状況に合わせて学習eポータル内の保護者連絡機能も活用している。学校からのおしらせをデジタルで閲覧する割合は、2021年度当初は約半数であったが、学期末は7割弱まで増えた。デジタル化が急速に浸透している。
枚方市では「枚方版ICT教育モデル」を2021年に策定し、今年3月に改訂。その指標が「5つのC」(Challenge、Communication、Collaboration、Creativity、Critical thinking)だ。思考力や判断力、表現力、忍耐力や自制心、回復力や意欲等といった非認知能力の育成を目指す。
それぞれの項目についても具体的な指標を定義付けた。例えばChallenge=課題を発見する力や解決するための粘り強く取り組む力、Communication=相手の意見を大切にする力、思いやりを持つ姿勢などで、それぞれの「C」で何が重要であるのかをわかるようにし、これら資質能力の育成を意識することを研修等で伝えている。
1人1台端末をより活用してもらうための「しかけ」は3つ。まずデータ分析の基盤作りだ。データを分析する力を各校が持つことは理想だが、最初からは難しい。そこで、学期ごとに行っている調査や活用状況等データから得られる、各学校の成果と課題、現状について教育委員会がピックアップし、グラフ化して学校に渡している。膨大なデータを提示すると理解に時間がかかる。そこで、ひと目見てある程度のことが理解でき、会話に発展し、授業に活かせるように、1枚にまとめている。
教育相談や三者懇談でフィードバックして活用できるように個人の5Cについてもまとめている。
次にクリエイティブな学びの創造だ。
昨年度実施したGIGAフェスは大きな反響を得た。今年度は、市内の小中学生20人のプロジェクトで、30年後の枚方市が、より魅力的なまちであるためにはどうしたらよいかを議論。Minecraftで創り、フェス当日に参加者が探検する。今年度も2023年1月28日に開催予定だ。
タイピング選手権や同市を本拠地とする男子バレーボールチーム「パナソニックパンサーズユニフォーム選手権inメタバース」など、民間企業とも連携して子供たちがワクワクするようなしかけに取り組んでいる。
3つ目はこれら取組の発信だ。
2年前からポータルサイトで積極的に発信。これまでと学びが大きく変わっていることを様々な方に見てもらいたいと考えている。
枚方市は、この3年で時間外勤務時間が大幅に減少した。過労死ラインといわれる月80時間以上の時間外勤務をしている教員の数は、この3年間で、中学校全体で40%から26%に、小学校でも全体の9・4%から2・5%に減少している。
まず、業務改善推進校10校が主体的に働き方改革を進め、その取組を市内に発信している。業務改善推進校は毎年入れ替え、外部発信や対話の機会を大切にしている。
市教委として大事にしているのは推進校との関わり方だ。一部の推進校のみが頑張り、他の学校に広がらない、という問題を防ぐため、推進校同士が関わる場面の設定を意識。迅速に情報共有し、現場から「こんなふうにしたい」という声を上げやすくしたいと考えてGoogle Classroom上にチームを設定。各校の取組や課題を共有した。年間で数回、対面で交流会も実施している。
コロナ禍で毎朝必須となった健康観察で情報端末を活用する学校に他校から問い合わせが相次いだ。すると問い合わせを受けた学校は説明動画を作成して提供。取組が他校に広がった。
1回30分のオンラインミニ研修を数多く実施。ストレスチェックを効果的に活用するためのアプローチ方法をWeb会議で共有したところ、推進校の取組が他校に広がった。
今後も学校の自走を支援する。
【第92回教育委員会対象セミナー・大阪:2022年10月14日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年11月7日号掲載