教育委員会対象セミナーを10月14日、大阪市内で開催した。吹田市教育センター、豊田市教育委員会、枚方市教育委員会が新たなネットワーク構築や教育データ利活用について取組と今後の計画を、富田林市立第三中学校の宮本教務主任が学校の様子を報告。当日の講演内容を紹介する。
豊田市教育委員会(小学校75校、中学校28校、特別支援学校1校)は、学校規模は20人から800人以上と、広域で多様な地域だ。本市では、物理的に分離していた校務系システムと授業系システムを統合し、将来のフルクラウド化による学校機能の向上に取り組んでいる。学校教育課の足立憲治・教育センター担当長と今枝利文指導主事が報告した。
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豊田市では、校務系と授業系のネットワークが物理的に分離されており、両者間でのデータ移動が煩雑であった。
USBメモリでデータを移動させることも多く、人為的ミスの危険もあった。
また、校務用PCはインターネット利用ができない。
これらの課題改善に向けて校務系と授業系ネットワークの統合を進めたいと考えた。
文部科学省は「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」で、アクセス認証型ネットワークの有効性を示している。そこで、昨年より検証を進め、今年9月に市内全校でシステムを統合した。
まず、校務用PCからインターネットに接続する通信経路を作った。
具体的には、教員用端末からAVD(仮想デスクトップ)に接続するルートを作り、リモートデスクトップでインターネットにアクセスする。
両システムの統合に併せて、仮想デスクトップ方式でセキュリティを確保。将来的にはEDRやCASB等ゼロトラスト対応の構築を段階的に進める。
AVDは、短期間で導入できる点、校務系と授業系を同時に操作でき、新たな操作方法の習得が不要な点がメリットだ。既存のAD(アクティブディレクトリ)と連携しているのでシングルサインオンも可能だ。
コスト面においてもメリットがある。従量課金なので、使用分だけ課金され、無駄なコストを削減できる。クラウド構成のため機器の契約がなく、期間に縛られない柔軟な運用が可能だ。
市内モデル校では、本仕組みについて9割以上が「使いやすい」「業務の効率が図られた」と考えており、好評だ。
主な理由は「データ移動が容易になった」「Web閲覧が可能になった」など。
実際によく行った操作として、「Web閲覧」「写真の取り込み」などが多かった。主にホームページの更新作業に使われているようだ。
ネットワーク統合により、校務用PCの用途が格段に増した。
校務用PCで協働学習支援「SKYMENU」が扱えるようになり、ワークシートの作成や提出物の確認もできるようになった。
連絡掲示板も利用できるようになり業務軽減につながっている。
AIドリルも導入しており、校務用PCで学習状況も確認できる。
校務用PCで作成したデータをそのままMicrosoftTeams上で児童生徒に配布したり、教員と児童生徒と共有するなど、用途は拡大している。
今回の統合は、将来のフルクラウド化に向けたステップの一つとして考えている。2025年のゼロトラストネットワークの実現に向けて、徹底的なログの取得とAIによる365日24時間ネットワークを監視している。また、現在進めている生体認証(顔認証)を全PCに導入し、高いセキュリティを確立していく。
【第92回教育委員会対象セミナー・大阪:2022年10月14日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年11月7日号掲載