教育委員会対象セミナーを7月12日、東京都内で開催。教育委員会と教員約100名が参集した。当日の講演内容を紹介する。
豊田市教育委員会(小学校75校・中学校28校・特別支援学校1校)の校務系と授業系ネットワーク統合の経緯と今後について市教育センターの緒方秀充所長と足立憲治担当長が報告した。
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豊田市は愛知県全体の17・8%の面積で、うち7割が山間部だ。人口42万人が一部に集中しており、山間部と中央の学校では人数に大きな開きがある。時間や空間を短縮できるICTの役割は大きいと考え、2010年から教育の情報化に取り組んできた。
GIGAスクール構想環境構築の際は「全員参加」「協働的な学び」「学びの継続」を第一に考え、個別最適な学びに役立つであろうAIドリルは今年度から導入。活用を始めたところだ。
校務環境は圧倒的に効率化した。出席連絡の機能を健康観察用に改良して児童生徒が朝、入力して送信している。情報の一元化も進み、熱中症対応マニュアル等各種マニュアルもすぐに見ることができるようにした。GIGA端末には「先生助けて」ボタンを設置し、緊急事態に対応できるようにしている。
2021年度からの情報化プランでは「つながる つくる 暮らし楽しむまち・とよた」を第8次豊田市総合計画のスローガンとして「自律」「協創」をキーワードに、不連続な時代だからこそ、未来につなげる力をつけることを目標としている。そのベースとなるものが「ネットワーク」「1人1アカウント」「クラウド活用」であると考えている。
豊田市ではこれまで、「校務系」「授業系」の物理的分離が求められており、両者間のやりとりにUSBメモリが必須であった。2020年度から論理的分離が可能になったこと、教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの改訂版でもアクセス認証型への移行が推奨されたことから、1台の教員用端末で校務系も学習系もアクセスできる仕組みとすることにし、本仕組み実現のため、AVD(Azure Virtual Desktop)を採用。教員用端末からAVDにアクセスし、仮想デスクトップを利用して学習系・校務系情報を同時に閲覧できるようにした。クラウド型仮想デスクトップ方式のため約1か月の短期間で構築できた。従量課金制としたことからコスト削減もできる。AVDを利用する際にはMicrosoft 365のライセンスが必要だが、市の保有するライセンスを活用できた。
モデル校の検証によると、98%の教員が使いやすい、50%以上の業務が削減できたと回答している。
ただし起動まで10~20秒かかる、同時接続数に制限があるので一定時間操作していない場合は自動でログアウトする、従量課金のため年間コストの想定が難しい等の課題はある。また、現状では、教員用端末の持ち出しはOKしているものの、ネットワーク接続なしで活用する運用である。ただし今後、フルクラウドになれば学校外からのアクセスも可能になる。現状の認証の仕組みは今後、端末入れ替えのタイミングで生体認証にする。
新しい学習スタイル、業務改善が進み始めていると感じている。
今後2年間は2025年度のフルクラウド化を目標に、教員も含めたデジタル・シティズンシップ教育に取り組む。最終的にはゼロトラスト環境の構築を実現したい。学習ログ活用ができる仕組みの構築や心と体の状態のデータ化による支援、探究学習のための時間確保等に引き続き取り組んでいく。
2023年度第55回愛知県視聴覚教育研究大会は、学校ではなく市として協力することとし、市内全校で取り組む。すべての学校が協力的だ。
【第89回教育委員会対象セミナー・東京:2022年7月12日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年8月1日号掲載