教育委員会対象セミナーを7月12日、東京都内で開催。教育委員会と教員約100名が参集した。当日の講演内容を紹介する。
東京都教育庁総務部(情報企画担当)の江川徹主任指導主事は、東京都の1人1台端末活用と教育データ利活用の今後について報告した。
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東京都教育委員会(小学校1校・中学校5校・高等学校186校・中等教育学校5校・特別支援学校58校)(都立学校のみ)では、2020年度から東京都の教育におけるデジタル化を目指し「TOKYOスマート・スクール・プロジェクト」を推進。1人1IDを前提とし、非認知情報を含めたあらゆるデータを一元化することで「個別最適な学び」等の実現を目指している。将来は、どの部分が苦手なのか等エビデンスに基づく指導方法により子供の力を伸ばすことができると考えている。
2021年に「東京都が考える教育のデジタル化ロードマップ」を策定してゼロ期から第4期までに整理。現在は拡大期(第2期)から普及期(第3期)への移行を目指している。
定期考査等の採点業務効率化につながる仕組みを全都立高に導入。紙の答案をスキャナーで読み取り採点するシステムで、事前のモデル実施において教員は49%の時間削減効果があったと回答している。設問ごとや観点別などの正答率が可視化できるため、授業改善につながると考えている。指導内容ごとの理解度について分析し、個票にして生徒に返却することも可能となる。
学習ログ(データ)の取得にも着手。具体的には、統合型校務支援システムと学習系システムのログ=主にOffice365の使用状況の一元化を目指している。今年度から統合型校務支援システムを特別支援学校含め全校に導入し、このシステム内の情報を可視化して、子供の支援に役立てる校務ダッシュボードが稼働中である。
データを活用した教育の充実に向けて教育ダッシュボードを今後の実装に向けて開発中だ。成績・出欠・保健情報等の統合型校務支援システム、定期考査採点・分析システム、課題配信・回収等を管理する学習支援クラウド(Office365)の情報を統合し、教育ダッシュボードにデータを収集・分析。学習効果や学びの過程がわかるようにする。データ分析に向けてデータ利活用委員会を立ち上げるとともに、大学との共同研究も行う。また、TOKYOデジタルリーディングハイスクール事業(TOKYO教育DX推進校)19校を指定し、データ活用について検証する。
将来は、データと教員の経験知のベストミックスにより効果的な指導につなげたい。取得するデータの管理を適切に行うとともに、データ活用の必要性について丁寧に説明していく。
都が3種類の端末を提示し、各高等学校が選択。新入生は学校の指定端末を専用販売サイトを通じて購入する。補助により実質負担金が3万円となるようにした。この端末については機能制限なしで渡す。なお同等の端末の持ち込みも可能。
高校生が購入する端末は自分のものであり活用は自由だ。好きなステッカーを貼っている生徒もいる。保護者に対しては、子供と話し合ってルールを定め、端末を適切に管理することを求めている。都立小中学校にはGIGA端末を配備している。
ネットワークは今年度、さらに強化。これまでのベストエフォート回線を、2Gbpsの帯域保証型とする。このネットワークをBYOD等用ネットワークと呼び、学校が調達した機器、児童生徒等のスマートフォン等私物端末、GIGAスクール構想配備による端末を接続できる。
デジタルを活用して「教員が教える」授業から、失敗・試行錯誤も含め「子供が主体的に学ぶ」場面を増やすことを推奨。教員が学習支援クラウドを活用した授業を円滑に進めるため、ICT支援員を都立学校全校に常駐させた。
情報モラル教育については、小中高を通して、ルールを守らせる指導から情報リテラシーを身に付けて適切に活用できる力を段階的に養うよう求めている。「端末をいつ、どのように活用するかは子供自身が決める」という端末の活用方針を都内公立学校に伝えると共に、チャットやコメント投稿、目的に応じて自らアプリを選択する等、発達段階に応じた積極的な活用を求めている。その一つとして、校内で子供が自由に発信する場を意図的に設定し、子供が適切に情報を発信する力を育成することを推奨している。
【第89回教育委員会対象セミナー・東京:2022年7月12日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年8月1日号掲載