教育委員会対象セミナーを7月12日、東京都内で開催。教育委員会と教員約100名が参集した。当日の講演内容を紹介する。
鎌倉市教育委員会(小学校16校・中学校9校)ではすべての子供の「ワクワク」をキーワードにアウトプット中心の学びの転換を図っている。濱地指導主事は「ICT教育ビジョンの構築は教員の意見を吸い上げながら丁寧に、環境整備は早急に進めていきたい」と話す。
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鎌倉市ではGIGAスクール構想により情報端末としてiPadセルラーモデルを導入。Google WorkspaceやSKYMENUCloud、5教科の指導者用デジタル教科書及び2教科の学習者用デジタル教科書、プログラミング教育教材、AIドリル等を導入・活用。また、情報モラル教育の独自教材「GIGAワークブックかまくら」を静岡大学及びLINE財団と連携して制作した。
ICT教育推進担当者は各校1人・計25人。今年度はその担当者会の中で、講師を招聘しての研究授業を3回予定している。GIGAスクール推進校の小学校2校、中学校1校は、ICT活用について合同会社LINK ALL(リンクオール)がファシリテートを行い、支援を受けている。指導主事が各校を訪問しての研修も行っている。
昨年度はSINETの実証事業により、ネットワーク回線の速度が快適で、GIGA端末活用がスムーズに進んだ。実証が終わり、回線がもとに戻ったことで活用に問題が生じている。現在は緊急措置としてインターネット回線を追加構築しており、今年度中に市独自でSINET接続構築を目指している。SINET接続には現状、大学との実証研究が必要で、横浜国立大学と連携協定を締結した。
すべての子供が「ワクワク」できる学びには、課題やテーマをもって山登りをする、そのプロセスに学びがあると考えている。最も重要になるものがアウトプットに重きを置いた授業観の構築であると考えている。
ふるさと納税の仕組みを利用した「鎌倉スクールコラボファンド」はリアルな社会課題に基づくプロジェクト型学習を企業や研究機関等とコラボレーションして実現するもの。2021年度は目標額(750万円)を達成し、市立小学校1校・中学校1校で「SDGsをテーマとした課題解決型学習」を行うことができ、「自分が動くことで地域や社会が変わるととても思う」児童が実施前の12人から実施後は54人に増えた。大学生の支援や専門家の協力を得て最後にアウトプットする機会も設け、ワクワクする学びを実現できたと考えている。今年度も長期のコラボレーションとして小学校1校・中学校2校で行っており、さらに短期間の連携も可能な仕組みを整えている。
自分の個性・特性に気づき、自分らしい学びの実現を目標に、地域の資源を生かした「かまくらULTLAプログラム」は、学校での学習になじめず、不登校あるいは休みがちな小学校4年生~中学校3年生対象のプログラム。昨年度は「森のプログラム」「海のプログラム」2回をそれぞれ3日間実施。今年度も実施予定だ。
【第89回教育委員会対象セミナー・東京:2022年7月12日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年8月1日号掲載