教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を3月1日神戸、3月9日福岡、3月16日静岡で開催。講演内容の一部を報告する。神戸開催は初。
長年にわたりICT活用に取り組んでいる菊地教諭は、静岡県浜松市の整備状況とGIGA環境に向けた準備について報告した。
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2020年度からGSuiteやZoom、Chromebookなどこれまで未経験のICT活用が始まった。本校の端末はこれまでの各校35台から2020年度中に約12%にあたる120台が、2021年度中に約70%にあたる530台が配備され、2022年度に整備完了の予定だ。浜松市では次年度から、情報化プロジェクトチームが立ち上がり、教育施設課にGIGA担当ができると聞いている。
本校は浜松市実践協力校として、5年生の自分のクラスで1人1台活用に取り組み、実践の蓄積と課題の洗い出しに取り組んでいる。今年は準備段階のステップゼロ、次年度からステップ1と考えている。
10月、GSuiteアカウントのIDとパスワード通知書を児童に配布。
全職員に対してロードマップとして浜松市の情報活用能力育成の目標を3年計画にして提示。GIGA環境に向けて「発達段階に合わせた、児童につけたい力の設定」「端末活用の年間計画への位置づけ」「何ができるのかについての校内研修」に取り組んだ。
ローマ字入力は10分間200文字を目標とするなど段階的に示し、朝の10分間を使って3年生以上がPC室でキーボード練習に取り組んだ。
先行して取り組んでいるクラスの児童がPC室のPCを立ち上げておき、各クラスの教員は児童をPC室に連れていくだけですぐに活用できるようにした。PC室の稼働率はこれにより100%になった。児童が熱心に取り組む様子を見て教員も安心する。タイピングガイドを作成して各自に渡すと、家庭で練習してくる児童も多かった。キーボード練習ツールは各社出ているが、記号がない、漢字変換できないなどそれぞれ特徴があり、本校ではキーボー島アドベンチャーを活用。ランキングが表示されるので励みになっている。
校内での利用の約束も決めた。持ち方や休み時間の利用、インターネットの利用などだ。
ICT支援員と連携し、情報モラル教育の年間計画を作成。教科書各社のWeb情報も参考にして道徳の時間を中心に取り組んだ。配備前の準備として端末のナンバリングは必要。年度で更新するのか、卒業まで同じ端末を持ち続けるのかを決めるのはこれからだ。
オンラインで学年集会や表彰、音楽会がわりの音楽配信、GoogleClassroom上の掲示板(ストリーム)にテスト範囲や縦割り遊びの集合時間を入れて共有するなど、できることから始めた。特別支援教育の児童にとっては、メモしなくても連絡が書き込まれるので好評であった。便利だった取組は、健康観察カードのデジタル化だ。当初は教員発の連絡であったが、6年生を送る会実行委員会の児童が連絡を記入したいなどの要望があり、実際にやってみると児童が連絡を記入していくことの利便性を感じるようになった。当初は「こんな連絡を入れてよいか」と相談があったが、次第に自分で判断して活用している。
Googleフォームによるアンケートもよく活用しており、現在は英語の単語や発音を検索したり、昼休みにタイピング練習をするなどが始まっている。
総合的な学習の時間のまとめでは振り返りでテキスト入力をしている。1分間につき80文字程度タイピングできるようになると書き込む量は増える。活用するに従いICT活用はこれまでの授業実践との掛け算であると感じている。最初の取組としては、テーマを決めてカメラ機能で撮影してスピーチをする等が良いだろう。子供の姿勢が変わると教員の気持ちも変わっていく。今後は保護者対応に取り組む。【講師】浜松市雄踏小学校教諭・菊地寛氏
【第70回教育委員会対象セミナー・静岡:2021年3月16日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年4月5日号掲載