教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を3月1日神戸、3月9日福岡、3月16日静岡で開催。講演内容の一部を報告する。神戸開催は初。
静岡県袋井市教育委員会(小学校12校、中学校4校)では小学校1~3年生にiPad、小学校4年~中学生にChromebookを配備し、Google Workspaceと連携して活用を進めている。袋井市のGIGA環境と活用等を村松氏が報告。
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2019年10月、PC室の端末更新に替えてLTEのiPad1280台とキーボード、タッチペンも配備。1台でも多く配備できるように考えた。LTE通信は1か月1回線あたり3GBとした。大型提示装置は小中学校全教室に約3年間かけて配備。指導者用デジタル教科書や実物投影機も配備したことで活用は比較的順調に進んだ。
本市では、2018年度から思考ツールを活用した授業について研修を進めてきた。全児童生徒に思考ツールのカードを配布し、授業で考えを整理・構築することに利用している。この思考ツール活用をICTでも推進。ICT活用の有無にかかわらず授業改善の繰り返しは大切であり、学習課題の設定や対話的な学び、振り返って考えを整理することが授業づくりの視点だ。学習アプリ「ロイロノート」がコミュニケーションツールとして考えを共有する際に役立っている。
そんな中、GIGAスクール構想が始まった。以前からタブレットの活用に取り組んでおり、教員からは「1人1台を早く実現してほしい」という声も届いていたため、2020年11月末の配備完了を計画した。
ICT活用で実現したい学びを考え、機器やアプリ選定について意見を集めて検討。iPadはタッチ操作がしやすいが、キーボードスキルの上達を望む中学校教員の意見もあり、本市では小学校1~3年生にiPad、小学校4年生~中学生にChromebookを導入することとし、既設のiPadを含めて1人1台環境となるようにした。iPadについてはWiFiモデルとLTEモデルが混在することになったが、これによりネットワーク負荷の軽減につながった。本市は小規模校、超大規模校と学校により規模が大きく異なるため、どの学年にLTEを配置するのかについて等細かな運用は各校に任せている。
導入研修は市内ほぼ全教員に対して行った。活用研修では教員同士の学び合いを促すため、学校同士で授業を見合うことを大事にしている。
2019年度配備の端末がLTEであったことで、ネットワーク環境整備前でも教室で気軽に活用でき、子供の積極的に学ぶ姿から教員がICT活用の良さを実感したことで、1人1台環境を活かす授業に取り組む教員が増え、活用開始直後の1月中旬のアンケートでは、ほぼすべての学級で活用していた。
教員には活用にあたって様々な不安があることも事実だが、子供はICT活用を楽しみにしている。ある小学校では、1年算数の授業で、マグネットを操作してできたかたちを自分で撮影して提出・発表したり、4年国語で、アンケートを作成・集計して分かったことをクラスに提案したりするなど、瞳を輝かせながら取り組んでいた。1人1台端末の活用で、分かりやすく子供がわくわくする授業を創出しやすいと感じている。校内でICT活用推進チームを作り研修主任と連携して学校ぐるみで取り組んでいる学校は、学校全体の取組が活性化している。
現在、袋井市教育情報化推進計画を改訂中。今後も、ICTを活用して協働的な学びや個別最適な学びの往還によって、考える力や情報活用能力の育成を目指す。
タブレットの持ち帰りについては、学校での学びと家庭での学びを連動させるための手段として検証しながらルール作りを進め、実施したい。
ICT支援員については学校からの要望もあり、次年度は、現在の月2回程度から、週1~2回程度の訪問となるようにする。教室と同じ環境で研修できるICT研修室も市教委内に用意。研修会の実施だけでなく、教員の自主的な学びの場としても開放している。【講師】袋井市教育委員会学校教育課 魅力ある授業推進係・村松邦彦氏
【第70回教育委員会対象セミナー・静岡:2021年3月16日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年4月5日号掲載