教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を3月1日神戸、3月9日福岡、3月16日静岡で開催。講演内容の一部を報告する。神戸開催は初。
福岡市教育委員会(小学校144校、中学校69校、高等学校4校、特別支援学校8校)は児童生徒数12万人以上で、政令都市の中では人口増加率トップにあり、ICT環境整備に伴う予算も膨大になる。永田主任指導主事は市の配備内容と活用について報告した。
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本市では、2020年度中に普通教室の提示環境を全校に配備した。
GIGAスクール構想による1人1台端末も、オンライン学習環境の構築を意識して、できる限り早期に配備することとし、小中学校はOSを指定しない仕様で入札。特に重視したのは「早期の納品」で、Chromebookに決まり、11月末に配備完了。
高等学校では既にiPad活用が進んでいたこと、特別支援学校からはiPadが使いやすいという声が届いており、iPadを配備した。
オンライン学習環境の構築ではニーズに合わせて4段階で取り組んだ。
オンライン学習には、オンデマンド型と双方向型がある。最初に取り組んだのはオンデマンド型の学習動画だ。
4~5月、休校期間の「学びを止めない」対応として、予習復習に役立つ動画を教育委員会と教員が連携して655本用意。約61万のアクセスがあった。現在はYouTube配信も組み合わせている。著作権に配慮するとともに、地域のお祭りの由来など地域学習に役立つ動画も充実した。WiFiがない家庭に対しては、数を把握してLTE端末をレンタルして貸し出した。
次に、双方向型にも着手。6月、分散登校のスタート時は、基礎疾患等があり登校不安のある児童生徒に対して双方向オンライン授業を実施。教室の授業(主に教員と板書内容の映像)をオンラインで家庭に届ける方法だ。当初はZoomを使って接続。Googleアカウント配備後はGoogleMeetを使っている。
次に取り組んだのが、長期欠席児童に対する学びの保障としてのオンライン授業だ。不登校児童生徒の保護者から、オンライン授業のリクエストも届いていた。当初はできる教員からというスタンスだったが、全教員ができるようにするため、教員研修も行った。
適応指導教室(ステップルーム)や保健室登校、院内学級の児童生徒、分散登校時の別教室にもオンライン授業をできるようにした。
保護者からは実施が求められるものの、それぞれの児童生徒にとってオンライン授業が有効か否かについて事前に話し合う必要があると感じている。
8月末、臨時休校や学級閉鎖が市内で始まったことから、その際には必ずオンライン授業で対応するように各校に依頼した。GIGA端末配備前だったため、家庭に環境がない場合はLTE端末を教育委員会がレンタルして貸し出しした。
GIGA端末配備後の12月、オンライン土曜授業を実施。学校配備の端末はWiFiモデルのため,持ち帰った際に家庭のWiFi環境に接続するなど今後の一斉休校等に備えた取組だ。土曜授業は家庭で接続してもよいし、学校の教室を開放してそこで取り組んでもよいことにした。
これらの取組を経て現在は全校でオンライン授業ができるようになった。
慣れるにつれて指導者用デジタル教科書を共有(※)してやりとりするなど、オンライン授業に進化も見られる。(※)SATRAS保障金制度により公衆送信が可能。
ある学校ではSDGsの発表会をオンラインで行っていた。学習支援ツールやAIドリルの活用、海外との交流、ゲストティーチャーのオンライン参加なども始まった。わずか2か月でできることが増えたことに驚いている。
休校期間、Googleフォームは大変役立った。子供の健康観察を電話でやりとりすると1日たっても連絡が終わらないがGoogleフォームで保護者に送ると、午前中に9割程度の返信が届く。電話の必要があるのは10分の1程度に減った。2021年度は早い段階でGIGA端末の持ち帰りを始める。調べ学習や反転学習など、授業改善に資する持ち帰り学習を予定している。【講師】福岡市教育委員会 指導部学校指導課主任指導主事・永田朗氏
【第74回教育委員会対象セミナー・福岡:2021年3月9日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年4月5日号掲載