教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を3月1日神戸、3月9日福岡、3月16日静岡で開催。講演内容の一部を報告する。神戸開催は初。
なぜ学校に1人1台端末が必要なのか、1人1台端末活用をどう進めていけばよいのか。山本教授は、「主体的な学びを実現するためには新たな学びに向かう100人の一歩が重要」と話す。
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「ガクチカ」という言葉をご存じだろうか。これは「学生時代に力を入れていたこと」。就職活動で調査書や面接時、学生に説明が求められているものだ。
1人1台端末は、持ち帰りを前提として「ガクチカ」の育成を意識することが重要だ。
従来のICT活用は、従来の授業の在り方を変えずに効率化、価値の向上を図るものであった。デジタルトランスフォーメーション(DX)では、教育や授業の在り方そのものが変わり、授業モデルや定義が変化する。オンライン学習の多様化が進むと学校や授業の在り方が問われることに気付き始めた教員も多いはずだ。
1人1台端末とクラウド活用・持ち帰り学習は令和の学びのスタンダードであり、「令和の日本型教育」では、個別最適な学びも協働的な学びも一体的に充実を図ることが必要だ。ではこれをどうしていけば活かすことができるのか。
学習の基盤となるスキルとは何か。GIGA端末はキーボード前提、クラウド前提、ログイン必須である。これらがスムーズにできることが必要である。
端末をカメラ代わりに活用して撮影・記録することも重要。データの蓄積が学びのポイントになるからだ。インターネットで調べる機会も多くなるだろうが、ここで必要な情報を探し出し、選択できる力の育成が求められている。
キーボードによる文字入力を継続的に行い、スムーズに表現できる力や、表やグラフを作成してプレゼンテーションする力も育む必要がある。
毎日取り組むことで数か月である程度身につく。やる前から「無理」と考えることは避けたい。1分間に60~80文字程度入力できれば、最後の3分程度の振り返りでテキスト入力ができる。毎日継続することで長く書けるスキルが身についていく。
思いついたときにすぐに使える状態にしておくこと、自由な活用を担保することで、1人1台の意味が生まれる。
一斉指導で活用が進んでいる大型提示装置は、1人1台端末活用においても重要だ。課題提示や全体での共有も1人ひとりの思考と主体的な活動を促すことを、より意識する、という点がこれまでとは異なる。
当初は個別でドリルに取り組むことから始める学校が多いだろう。しかし個人の考えをまとめて発表する、という活動を、学年が進むにつれより高度にしていくことが求められる。1年生であれば、テーマを決めて写真を撮影してそれについて説明する、という活動が考えられる。実験や観察のときに写真や動画で記録を撮影する、という活動も取り組みやすい。重要なことは、これらを子供がやりたいと思うこと、やりたいと思ったときにできること。さらに教科等横断的に、単元間で発展させていく活動に進化していく授業づくりが必要だ。
日頃から端末活用に取り組み、学校情報化先進校認定を受けている高森町立高森中央小学校(熊本県)では、端末は6年間使う。名前も記入してあり、自分のものとして大事に使っている。
全学級で取り組むために授業外のスキルアップも行っている。朝活動では各自で進められるアプリを使って週3回キーボード練習を実施。週2回、昼休みに、高学年が低学年に教える活動を行っている。
教員に求められるものは、子供の活動を促す授業づくりのアイデア、素材の教材化、展開の文脈作りだ。
そこで指導主事やエキスパート教員の指導力向上のため、先進校の視察や有識者の助言を受け、教科リーダーによる研修で授業アイデアを共有し、各校で実践して振り返る、という研修スタイルで行っている。このとき管理職に求められるものは、コーチングとメンタル面の支援だ。
学校と地域が連携した推進体制も重要だ。
有識者や保護者、地域の代表者などが所属する推進協議会は、設置したほうが良い。福岡県では、県全体で役割分担とロードマップを共有、公開しており、参考になる。【講師】中村学園大学教育学部教授・山本朋弘氏
【第74回教育委員会対象セミナー・福岡:2021年3月9日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年4月5日号掲載