全国の小中学校では1人1台のPC配備が進んでおり、今後一層、情報活用能力の育成が求められていく。そんな小中学生の学びを高等学校はどう引き継いでいくのか――教育家庭新聞では12月19日と1月16日、高等学校IT活用セミナーをオンラインで開催した。
聖徳学園中学・高等学校(東京都武蔵野市)ではBYODで中学校1年生から高等学校3年生まで全員がタブレットPC(iPad)を活用しており、6年目を迎えた。万が一の際の貸し出し用のタブレットPCと1クラス分のノートPCも用意。多様な学習に対応できるようにしている。「情報」を担当している品田教諭は同校のクラウド活用を前提とした学びについて報告した。
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本校は高等学校でも受験による入学者がおり、東京中から集まるため、生徒の環境も大きく異なる。そこで中高一貫ではあるが高等学校でも一から始める必要がある。公立学校でも1人1台のPC活用が始まりつつあり、私学としての差別化は今後、一層必要だ。
本校では創造的な活用を重視しており、STEAM教育の取組は3年目。理系に限らず教科横断的な学びとして考えている。問題解決は理系のみでできるわけではないからだ。
課題は教員が生徒に課すもので、評価は教員が行うもの、というイメージを払拭したいと考え、生徒の作品を教員が評価して終わるのではなく、作品を生徒同士でシェアして評価し合っている。これまで以上にアプトプットの機会が増え、ここにGSuiteの共有機能が役立つ。
インプットも重要だが、インプットの方法がこれまでとは異なる。これまでは教員の説明を聞いて理解していたが、今後は、アウトプットのために必要なインプットは何かについて生徒自ら考えた上で、身に付けていくことが理想。そのような取組を目指している。
自らインプットする=学びに向かう力を育むために必要なことは、アウトプットの楽しさをたくさん実感すること。ICTという拡張ツールにより、アウトプットが苦手な生徒も楽しく取り組むことができる。
毎年高校1年生で1学期に実施しているのは、ICTを使って自ら「外国語を学ぶ」こと。音声認識で字幕を出すWebアプリ「Clips」で自分の発音をチェックするなど翻訳アプリや各種クラウドサービスを使って学ぶ。この実践は3年目になる。
プレゼンアプリ「Keynote」と動画編集アプリ「imove」で学習動画も制作。英語、数学、古典、物理など生徒制作の動画は様々な工夫が満載で、生徒同士のシェアも評価も楽しい。模擬定期考査問題はPagesで制作。模範解答はApplePencilで手書きし、これらをGoogleドライブでシェア。アウトプットのために自らインプットし、互いにシェアすることでオンラインでも学び合えることを体験する。この取組は2年目だ。
生徒アンケートでは、集中して取り組むことができた、友達とシェアできた、教え合えた、よく分かったなど20項目について5件法で分析。いずれも授業前後で大きく伸びた。
動画制作を活用したアウトプット重視の学びには高い満足感があり、大きな可能性があると感じている。学んだことをさらに深く調べたいというプロジェクトを設定できれば、新しい考えを構築したり深めたりができ、発表したい、意見を聞きたいという意欲につながり、視聴者の視点に立って制作できるという好循環が生まれる。小中学校で行われるであろう創造的な学びを活かし、表現したい気持ちを消すことなく学びたい、伝えたいというプログラムを開発していきたい。【講師】聖徳学園中学・高等学校学校改革本部長 品田健氏
【高等学校IT活用セミナー:2020年12月19日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年2月1日号掲載