全国の小中学校では1人1台のPC配備が進んでおり、今後一層、情報活用能力の育成が求められていく。そんな小中学生の学びを高等学校はどう引き継いでいくのか――教育家庭新聞では12月19日と1月16日、高等学校IT活用セミナーをオンラインで開催した。
東京都立西高等学校は、東京都教育委員会のBYOD研究指定校としてネットワークを配備して生徒所有の端末(主にスマートフォン)の授業活用を2018年度から始めた。同校のICTを担当する数学科の森本教諭は3年間の成果を報告した。
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本校は「国際社会でリーダーとして活躍できる人材の育成」を目指している。現在の高校生が大学生になると、オンライン授業に参加し、社会に出ると、オンライン上の共同作業が必須になるだろう。高等学校でもそれにつながる取組が必要だ。
2018年度から2年間、東京都のBYOD研究指定を受け、普通教室24室と特別教室1室にWiFi環境とICT支援員の常駐が整備され、生徒のスマートフォン活用から始めた。しかしそれぞれのOSが異なり、使えるアプリの機能が異なること、画面サイズが小さくて見にくい等の課題があり、2020年度から、学校推奨のタブレットPC(iPad)を決め、タブレットサイズの端末を持ってくることを生徒に課した。現在、6割の生徒が学校推奨のタブレットPCを購入しており、8割程度の生徒がタブレットPCを活用している。
クラウドサービスは、MicrosoftTeams(以下、Teams)、Classi、ロイロノートを活用。Microsoftアカウントは東京都が全生徒分を配備した。Classi、ロイロノートは学校で契約した。
Teamsは主に探究活動やアンケート集計、HR活動、教材配布で活用し、Classiは主に生徒・保護者との連絡で、ロイロノートは課題配布・回収、双方向授業等で活用している。
本事業に伴い、パソコン委員会の上位組織としてICT委員会を設置。新たな分掌としてICT、学年ICT、教科ICT担当を追加し、分業で取り組んだ。研修は2か月に1回程度、ICT委員会で実施。授業見学をして意見交換をしている。
ICT活用で育成したい力を考え、検証を経て問題ないと確認した上で取り組んでいる。
探究活動ではOneNote Class Notebook(以下、Class Notebook)やMicrosoft Forms(以下、Forms)を活用。いずれも「共有」できることが重要なポイントだ。
Class Notebookの共同スペースに複数の生徒で書き込むことができるので、離れた場所にいても共同作業ができる。研究成果の中間報告会では、発表を聞きながら各自でコメントを書き込めるので、発表後、すぐに自分たちの発表に対するコメントを確認したり質問に回答したりすることができた。
教員はClass Notebookのコンテンツライブラリーに課題や資料、評価ノート等のリンクをおき、生徒がアクセス、コピーして各自のPCで作業している。
Formsによるアンケート等もリンクを配布して回答。集計結果は、代表生徒に配布して生徒間で共有している。
「数学Ⅰ」の授業「データ分析」では、課題配布・回収・回答の共有のためロイロノートを活用。相関係数のスライドを配布して、式が持つ意味について各自に考えさせた上で「相関係数」を求めさせ、散布図も完成させて気付いたことを書き込み、生徒間で共有して話し合った。
従来、相関係数は計算に重きを置く授業になりがちだが、分析し、その内容を他の生徒に伝えることを主眼とした。「理解にとどまらず、意味を理解し活用する」力の育成が目的だ。
今後も3種類のクラウドサービスの活用方法を深めていく。【講師】東京都立西高等学校教諭・森本貴彦氏
【高等学校IT活用セミナー:2020年12月19日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年2月1日号掲載