全国の小中学校では1人1台のPC配備が進んでおり、今後一層、情報活用能力の育成が求められていく。そんな小中学生の学びを高等学校はどう引き継いでいくのか――教育家庭新聞では12月19日と1月16日、高等学校IT活用セミナーをオンラインで開催した。
村松教諭は、「情報Ⅰ」の実践とそれを踏まえた「情報Ⅱ」の授業を提案した。静岡県教育委員会ではGoogleアカウントを全公立高等学校の生徒全員に配備。Chromebookは2020年7月に理数科1年生全員にBYODで導入。WiFi環境は12月に工事が完了している。
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必履修科目となる「情報Ⅰ」では、知識及び技能の習得のため「情報デザイン」の基礎知識を習得。思考力判断力の育成のため、メッセージを的確に伝えるためのポスター等をデザイン。学びに向かう力の育成に向けて、学校をより良くする機運の醸成を意識して取り組んだ。
「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」の授業で取り扱う情報デザインについては、認知工学や情報工学を教員が学ぶことで理解が進むのではないかと考えている。「デザインとは美的センスにとどまらず、論理的なものである」という上平崇仁教授(専修大学)の著書『高校情報科におけるデザイン教育のためのいくつかの試案』の指摘に納得し、よいデザインとは、人の気持ちや考え、行動を変えることにつながること、身近な問題や課題を今ある資源を見直し改善することで解決につながることをポイントに授業を検討。情報デザインをPBLの一環とし、「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」を組み合わせ、全9時間で、本校をより良くするためのポスター制作に取り組んだ。
良いデザインが人の行動に影響を与える例として、階段に標識を設置して駅の人の流れを変えたJR日本グループと大阪大学の取組も紹介。
横須賀美術館の学芸員が作成した横須賀のウォーキングマップと、同地区のGoogleによる衛星写真を比較し、ウォーキングマップが、情報伝達の3観点「誰に、どのように、何を」伝えているのか、各自がウエビングの手法でキーワードを整理。R80の手法(2文で計80文字以上、2文は接続詞で結ぶ)で考えをまとめてGoogleフォームで提出させた。
「ガステーブルのつまみとバーナーのレイアウト変更により、誤操作を極力なくせるガステーブルにデザインする」という課題は、ドナルド・A・ノーマン『誰のためのデザイン?認知科学者のデザイン原論』から引用。見せ方の工夫、色の持つイメージや、組み合わせなど科学的な理解に基づくデザイン学習を行ってからガステーブルの課題や問題点を検討し、デザインを考えた。
「デザインの視点で南高校を広く観察する」宿題ではグループワークでアイデアを広げ、キーワードをグルーピング。各自の主張をコンセプトシートにまとめ、オリジナルのポスターを制作。ルーブリックも示し、自己評価も実施。評価の観点は、フォント、文字の見やすさ、レイアウト、配色、メッセージ、全体で、各4段階で評価。点数化して各クラスの優秀作品を発表し、評価し合った。授業前後で、デザインのイメージが「芸術表現」から「伝達行為」のイメージが強くなり、情報デザインの理解が進み、デザインという情報伝達による主体的な社会参画を促す学習になった。
情報Ⅱ「コミュニケーションとコンテンツ」では、情報Ⅰの情報デザインの学習にGSuite
による協働学習とPBLを組み合わせることを構想している。
2020年度の1年生「総合探究」は、SDGsの視点で浜松市の課題を検討。地域経済分析システム「RESAS」を利用し、Googleサイトを用意して各班で一斉に意見交換しながら学んだ。クラウドを利用すると共有が容易。共同学習の良さを体験しながらコンピテンシーの育成につなげることが重要。これを次年度の修学旅行の学びにつなげたい。【講師】静岡県立浜松南高等学校教諭・村松卓氏
【高等学校IT活用セミナー：2020年12月19日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年2月1日号掲載
