全国の小中学校では1人1台のPC配備が進んでおり、今後一層、情報活用能力の育成が求められていく。そんな小中学生の学びを高等学校はどう引き継いでいくのか――教育家庭新聞では12月19日と1月16日、高等学校IT活用セミナーをオンラインで開催した。
鹿野調査官は新しい学習指導要領で設置された「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」実施のポイントについて説明した。
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小中学校で1人1台のPCが配備され、新学習指導要領では情報活用能力の確実な育成が求められており、高等学校の新学習指導要領はその流れを受けた内容となっている。
「情報Ⅰ」は、2022年度からは必履修科目となり、大学入学共通テストでも「情報」新設を検討している。「情報Ⅰ」の内容として2021年夏には入試大綱の予告が出される見込みだ。
小中学校ではプログラミング学習や統計的な考え方、情報デザインを学んでいることから、「情報Ⅰ」はこれまでよりも高度な内容が求められており、かつ国民的素養として位置付けられている。
これまでは、意義の「理解」が中心であったが、今後は意義や背景を知って適切に対応する力――判断したり予測したり改善したりする力の育成が求められる。
例えば「情報デザイン」では、ポスターやWeb制作に留まらず、インターフェイスやアルゴリズム、モデル化、データの適切な取り扱いなど、対象を幅広く捉えている。
プログラミングも全員が取り組む。1人1台のPC配備で、興味に応じた学びが可能になる。音声認識や計測・制御、物理シミュレーション、自然界のシミュレーションなど、興味に応じて問題の発見・解決を通してプログラミングも学ぶ。
「情報通信ネットワークとデータ活用」では、暗号化プロトコルやデジタル署名、無線LANの仕組み、クラウドの仕組み、分散型データベースなどを理解した上で小規模な情報通信ネットワークを設計できるようにする。
数Ⅰとの連携も重視。数Ⅰでは、統計や分析、データの扱いを学び、情報Ⅰでそれらの知識を活用・実践していくことが望ましい。そのためには、カリキュラム・マネジメントが重要になる。
「情報セキュリティ」については、法規・制度の内容理解に留まらず、意義を知ってセキュリティ更新プログラム等の必要性を理解して判断力を育む。
「情報Ⅱ」は、情報Ⅰの発展的な内容となる。データサイエンスや情報システムの構築、問題の発見・解決の探究に踏み込む。データサイエンスは、「数学B」との連携が考えられる。
プロジェクトマネジメントも含め、主にグループで情報システムを構築するとともに、データを取り扱うプログラミングにも触れる。また、人工知能の活用を考察、実践していく。
子供は、これらの内容につながる学びを小学校から積み上げているので、高等学校で対応できるように準備を進めてほしい。文部科学省では研修用教材等を提供している。実践事例集も公表予定だ。【講師】文部科学省教科調査官・鹿野利春氏
【高等学校IT活用セミナー:2020年12月19日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年2月1日号掲載