川崎市立高津高等学校はICT推進校ではないが、職員会議で生徒のBYODによるPC活用方針を決めて2018年度から取り組んでいる。経緯を露木総括教諭が報告。
2018年、進路指導部と英語科より提案があり、BYODによるPC活用の検討が始まった。理由は、新しく始まる大学入学共通テストや各種英語民間試験などのCBT対策やポートフォリオ対応、探求学習の本格開始に向けた準備などだ。不安視する声はもちろんあったが、職員会議で決まった。BYODによる保護者負担は、動産保険(限度額5万5000円)含めて月額4000円×36か月で、LTE回線も使用できる機種とした。
当初はiPad導入を想定していたが、キーボードが保険対象にならないこと、MDM管理を教員が行わなければならないことなどから、WindowsPCを導入。イングリッシュセントラル、ClassiNOTE、Office、InterSafeなども導入。
学校説明会で中学校3年生に説明し、市内51校にポスターを配布するなどで生徒・保護者に周知。2019年度からスタートしたが、当初、少人数用無線AP21台と高性能無線AP2台のネットワーク環境で、3クラス以上の接続があると不具合が生じ、7クラス同時だとほぼ接続できない、ということがわかった。そこで2020年3月、教育委員会の協力を得て設備を追加。高性能AP7台と共にPoE対応スイッチングHUB等を更新し、現在は560台のPCが接続しても快適につながっている。
2019年度には、ICT活用委員会を新しく設置。Society5・0で生き抜くことができる生徒の育成を目指し、目標を設定した。
タイピングスキルの向上も目標の1つとした。これができると目に見えてPCを効率良く使うことができる。ポートフォリオも自分で入力でき、検索能力の向上にもつながる。
国語で「ワードクラウド」により意見を可視化すると、生徒も興味をもって様々なものを「ワードクラウド化」していた。俳句を書道で表し、それを写真で撮影してClassiNOTEにアップし、意見を交換する取組も盛り上がっていた。作品を共有しやすいこと、意見を交換しやすく盛り上がること、教員の手元にも作品が残ること、生徒はポートフォリオとして蓄積しやすいことなど、様々なメリットがあった。
休校期間、3年生はタブレットPCを持っていなかったことから、川崎市総合教育センターと連携し、GSuiteモデル校として、他校に先行して配備。全生徒にGoogleアカウントを発行してオンライン学習を進めた。
これに伴い、教職員にも4月上旬、急遽研修を実施。まずGoogleMeetを研修。その後、オンラインでGoogleドライブ、Googleフォーム、スプレッドシート、ライブ配信等、1つずつ短時間の研修を実施。ゲーム感覚でできる体験も盛り込み、好評であった。
4月13日、生徒にアカウントを配布して24日にMeetでオンラインHRを実施。特に新入生には好評だった。5月19日からオンライン学習として動画配信やGoogleフォームを使ったワークや小テストなどを始めた。この期間は常にMeetを立ち上げ、問い合わせにすぐに対応できるようにしていた。
失敗はあっても間違いはないと信じ、教員も生徒も使うことに必死の3か月間であったが、この経験を経て、通常登校再開後の授業が変わった。
課題提出をオンラインで行う教員が増えた。Meetを気軽に利用できるようになり、外国の方と交流したり、英語リスニングもオンラインで行ったり、登校できない生徒に対してオンライン試験も実施するなど、これまでできなかった授業が増えた。
部活動ミーティングもオンラインで密を避けて活動を再開。ここからが真のスタートであると感じているところだ。【講師】川崎市立高津高等学校総括教諭・露木律文氏
【第67回教育委員会対象セミナー・東京:2020年7月22日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年8月3日号掲載