東京都豊島区(小学校22校・中学校8校、うち小中連携校1校、児童生徒数約1万1500人)は2020年度、情報化ビジョンを改定して2021年度整備を目標に1人1台PC環境整備を目標に盛り込む予定であったが、GIGAスクール構想により整備を早期に進めることになった。木本氏が報告した。
2011年度に「としま教育の情報化ビジョン」を策定して無線LANや電子黒板、書画カメラ等の整備を計画的に進めてきた。タブレットPCの配備を始めたのは2013年度からで、2014年度時点では5人に1台の整備率。2018年度には3人につき1台の整備率まで台数を増やした。2019年度に校務用PCを入れ替え、二要素認証やインターネット分離、ファイル無害化などを首長部局と共に進めている。
GIGAスクール構想では、既に導入済の無線AP750台のうち、年式が古いなどでつながりにくい約300台を更新し、ケーブルもカテゴリ6Aとして校内ネットワーク環境を増強して充電保管庫も配備するなど計画をであったが、3月の学校臨時休業に伴うGIGAスクール構想の前倒しにより、状況が一変した。
子供・家庭・学校が休業中でもつながることができる方法のひとつとして、4月6日、GSuiteの説明を受け、すぐに導入する方向で検討を開始。教育委員会と首長部局が問題意識を共有し、GIGAスクール構想の前倒し整備の準備を一致団結して進めた。
保守契約をしている事業者に設定を依頼し、ドメインを登録、教員アカウントと児童生徒用アカウントを作成した。既に導入している校務支援システムの名簿を使って教育委員会側で迅速に発行することができた。
GSuiteの設定承認は、通常は数週間かかると言われているが、特別対応により数日間で終了。個人情報審議会の了承は取れていなかったため、審議会の開催準備を進めつつ、当初は双方向のやりとりや個人名表示は禁止で準備を進めた。
28日には校長会で、GSuiteの試行運用開始と1人1台PC配備を周知。つながりの確保を第一義とすることで了解を得た。
Googleに依頼してGoogleMeetを使った90分間のオンライン研修を実施。全校の教員が参加した。
連休明けの5月7日に児童生徒のアカウントを学校に配布。操作マニュアルも送付して、5月15日までに各学校の教員がGoogleClassroomを設定するように依頼。慣れないことも多く学校は大変であったと思うが、これを使った健康観察を行うことを目標に作業を進めた。
児童生徒へのIDとパスワードは封書で保護者に手渡しをした。
臨時議会を開催して補正予算が成立したのは5月11日。13日には個人情報審議会を開催して、GSuite上に氏名を入れても良いという承認を得、14日に児童生徒氏名を登録。15日にGoogleClassroomの試行運用を開始。6月1日からの分散登校期間もこれらの仕組みを継続して活用している。
5月から6月にかけては問合せに追われた。緊急対応のため保護者のスマートフォンを使ったアクセスが多かったことから、最も多かったのがログインに関するものだ。パスワードを設定していないとセキュリティが低いと認識されてアクセスできない、保護者アカウントをログアウトしてから児童・生徒アカウントでログインしなければならない等だ。
6月30日にはプロポーザルで事業者を決定。早期のPC確保のため、プロポーザル提案にPC確保も含めた。LTEは必須要件。WindowsPCもChromebookも魅力はあるが、僅差でChromebookに決定。8月下旬から導入が始まる。このほか、ドリル学習や協働学習、履歴管理等ができるミライシードクラウド版も導入。Edtech補助金を使ってデジタル教材等を導入する学校もある。
PTA連合会がGSuiteのマニュアルを作成するなどの協力も得た。迅速に進めることができたのは、子供と学校とのつながりを確保するという目標を全体で共有できたからこそ。今後、安全で使いやすいことを目標に、細かい運用ルールの作成も進める。【講師】豊島区教育委員会庶務課学校ICTグループ係長・木本隆氏
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教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年8月3日号掲載