3月7日、教育家庭新聞社は大阪市内で、第8回私立公立高等学校IT活用セミナーを開催。5人の講師が1人1台PC活用を始めとした取組を報告した。
2013年から生徒用iPad1人1台を整備している東海大学付属大阪仰星高等学校・中等部では、高等学校の新学習指導要領開始に向けた準備に今年度から着手している。教務主任を務める阿部教諭が報告した。
本校は男女共学・生徒数1300人以上で、卒業生の10~15%程度が東海大学に推薦進学する。近畿圏内の先進校にも後押しされ、2013年度に中等部でiPadの1人1台配備を進めた。ちょっとした事件や事故ですぐに職員室が大騒ぎになるなど、馴染むまでの苦労は多かった。その最も大きな原因が、全教員へのiPad配備に3年かかったことだ。状況が好転し始めたのが、全教員配備後の2017年度だ。校内で教育のICT化ビジョンを策定し、ルールの肥大化を防いだ。
教育のICT化推進委員会が中心となり授業活用のための教科内研修や公開授業などを行った。ICT支援員も常駐してMDMなどの管理を担当。現在、中高生・教員のiPad約1500台が稼働しており、「Classi」「ロイロノート」を中心に活用している。
フィルムとカバー装着を必須としているが、生徒のiPadは想像以上に故障が多い。鞄の中で破損しているようで、次年度は、これまでより頑丈なタイプのカバーを推奨する予定だ。
インフラ面の課題は、2015年度に配備を開始したプロジェクターの更新だ。プロジェクターは今年から更新予定であったが、大阪北部地震の影響で校舎修理が喫緊となり、延期になった。プロジェクターのない授業はもう考えられないが、故障寸前の状態のものもある。リースによる配備にしていれば、予算により左右されることがなかっただろう。
本校ではWiFiを整備しているが、これからICT化を進める学校は、今後拡大する5Gとするか、WiFiを整備するかについて、検討することになるだろう。
会議資料や保護者への配布物などのデジタル配信など教員のICT活用は浸透しつつあるが授業改革は個人レベルにとどまっている。そこで「新たな学び」に向けた授業改善を目標に、今年度から発足したのが「ESDプロジェクト」だ。
中等部1年生は新学習指導要領開始時、高校生となることから、中等部1年生の学年主任と校長もプロジェクトメンバーとして所属。企画をすぐに実行できるようにした。
本プロジェクトでは探究学習とカリキュラムマネジメント、学びと評価の一体化に資するルーブリック評価とeポートフォリオの構築・推進、日常的な授業のアクティブ・ラーニング化に取り組み、具体的なカリキュラムとシラバスの設計を課題として挙げた。週1回の定例会を設け、まずはどんな生徒を社会に送り出したいのか、についての共通理解から着手。先進校の視察、学級活動・行事の整理、育成したい資質能力の整理とルーブリック開発などを進めているが、妥当性や整合性について教育学の専門家のアドバイスが欲しいと考えているところだ。教育改革に向けたアウトソーシングの必要性を感じており、専門家とのコラボレーションも検討中だ。
現在、探究の実施にあたり、次のように計画をしている。▼「探究科」を設置し、担当教員を配属。 ▼2021年度からスモールスタートで2クラスから開始。 ▼2022年度に全面実施。【講師】東海大学付属大阪仰星高等学校・中等部教務主任・阿部守勝氏
【第8回私立公立高等学校IT活用セミナー・大阪:2020年3月7日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年4月6日号掲載