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教育ICT

eポートフォリオのマンネリ化を防ぐ<高槻中学校・高等学校教頭・前田秀樹氏>

2020年4月6日
第8回私立公立高等学校IT活用セミナー

eポートフォリオのマンネリ化を防ぐ<高槻中学校・高等学校教頭・前田秀樹氏>

3月7日、教育家庭新聞社は大阪市内で、第8回私立公立高等学校IT活用セミナーを開催。5人の講師が1人1台PC活用を始めとした取組を報告した。

学修インタビューでふり返りを再構築

高槻中学校・高等学校教頭・前田秀樹氏

高槻中学校・高等学校教頭・前田秀樹氏

2020年に80周年を迎える高槻中学校・高等学校は10年前から教育改革に着手。2015年度からスタートした「学修インタビュー」により、指導と評価を、より具体的な形で一体化。生徒の学びに向かう姿勢の向上や新たな学びの実現に大きく貢献したという。前田教頭が報告した。

「学修インタビュー」は、本校独自の取組だ。自分の人生の責任者として自らを成長させていく力を育むことを目的としている。スタート時には、学校全体で「学力」や「資質能力」を再定義。3つの資質・能力にメタ学習をプラスし、「4次元教育」として取り組んだ。

「メタ学習」には特に力を入れた。メタ認知能力の高い人は学校でも社会でも力を発揮できるという研究成果を提示し、学校全体で重要性を共有。学習や行事などあらゆる行動をふり返る機会を設け、さらに「学修インタビュー」として、学年末に生徒・保護者と面談を行っている。

三者面談で自分プレゼン
メタ認知力を育む

生徒は、三者面談の際、どんな経験や学びにより自分がどう変容したのか、成長したのかをふり返り、「学修」をショーケース化。5分程度の「自分プレゼン」を行う。教員と保護者はその内容を深める質問を行うことで、生徒のメタ認知を高めていく。これが「学修インタビュー」だ。最終的にはすべての生徒が「1年でこんなところが成長した」と自覚できること。それが担任の最も大きな仕事であるという共通理解を図って進めている。

この「自分プレゼン」づくりの資料になるのが、自己評価のためのルーブリックとeポートフォリオである。

eポートフォリオを始めた学校でよく聞くのは、「ふり返り疲れ」だ。本校の場合は、蓄積してきたふり返りを再構築する機会として「学修インタビュー」を設けているので、eポートフォリオのマンネリ化を防ぎ、より主体的な評価・行動につながっている。

学修インタビューの前後で調査すると、自己効力感が高まっていることが分かった。

ある大学の1回生と比較したところ、本校の生徒のほうが、自己効力感が高く、成果を実感した。

「学修インタビュー」や日頃の授業で重要なのは「言葉かけ」だ。指示やアドバイスではなく、生徒の発言を深掘りすることが必要だ。「頑張れた」というときはこんな質問を、「ダメだった」というときはこんな質問など、教員用のマニュアルを用意。研修も年2回の全体研修のほかチーム研修も行っている。

今後は、学修インタビューでの生徒の自己評価が、教員の評価と一致するのか、どんなタイプの生徒がどんな推移をたどるのかなどについてさらに調査・分析していきたいと考えている。

「論証モデル」で探究活動
ICTで適時適切な指導

今、新たに着手しているのが探究活動だ。

高等学校では新学習指導要領において、あらゆる教科に探究活動が盛り込まれている。

探究活動を単なる調べ学習ではなく、新たな知識の創造につながる活動とするため、京都大学・松下佳代教授の指導の下で「論証モデル」を開発。各教科の学習にも活かしている。

論証モデルのスライドは、Google Classroom 上にアップ。各自が「課題・問い」「研究の動機」「仮説」「事実」「論拠」「異なる意見」等10枚のスライドに従って探究を進めていく。その過程で、探究ステップごとに4回eポートフォリオを提出。ICTにより、適時適切な指導と評価ができる。

重要なのは、これら10枚のスライドの内容を1枚にまとめた「要約」スライドだ。ここで全体像を俯瞰・把握し、各項目のポイントを確認する。探究の要旨を予めまとめているため、すぐにポスター発表ができる点もメリットだ。

指導については、3クラスを6人の教員で担当。Google Classroom上で論証モデルに共有をかけると、生徒の進捗がすぐにわかるので、指導がしやすい。

生徒の自己評価では、探究用のルーブリックで6項目の観点について4段階評価している。

当初、問いをたてることに苦労していた生徒も、回を重ねるごとに没頭し、学びに浸るようになる。指導実感として探究の面白さと可能性はそこにある。次年度はこれをもとに論文作成に挑戦する計画だ。【講師】高槻中学校・高等学校教頭・前田秀樹氏

【第8回私立公立高等学校IT活用セミナー・大阪:2020年3月7日】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年4月6日号掲載

  1. 奈良市立一条高等学校教頭・成松亨氏
  2. 高槻中学校・高等学校教頭・前田秀樹氏
  3. 近畿大学附属豊岡高等学校・中学校ICT担当教諭・奥田幸祐氏
  4. 和歌山県立星林高等学校情報科教諭・西川充伸氏
  5. 東海大学付属大阪仰星高等学校・中等部教務主任・阿部守勝氏
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