3月7日、教育家庭新聞社は大阪市内で、第8回私立公立高等学校IT活用セミナーを開催。5人の講師が1人1台PC活用を始めとした取組を報告した。
兵庫県北で唯一の私立高等学校である近畿大学附属豊岡高等学校・中学校は4年前からICT活導入・活用に取り組んでおり、現在、iPad、Chromebook、WindowsPCをすべて活用している。同校ICT担当である奥田教諭は4年間の取組を報告。当初、ICT活用・導入に反対していた教員も今は積極的で、研修の参加率も100%。現在は学校全体で一丸となって取り組んでいるという。
2015年当時、ICT導入に向けてどのような端末や仕組みが必要なのかについて情報収集を開始。先進校の取組を見るたびに異次元の授業であると感じていた。次第に「ICT活用には、自分の授業をアップデートしていくという姿を生徒に示すことが重要な要素なのではないか」と考えた。
まず、教育環境を変更。可動式の台形テーブル、全面ホワイトボード、短焦点プロジェクターを整備してICTルームを設置したところ、教員の評判も良く活用が進んだこともあり、授業のアップデートに着手。
ICT委員長として最初に取り組んだのがGSuiteの活用だ。様々な選択肢はあったが、個人負担を抑えるための選択だ。予備校も大きな塾もない地域においては、私学のライバルは公立高校。保護者負担を大きく変えることは難しい。
ブラウザベースの教育を目指し、その3か月後にChromebookを生徒用に35台導入。こちらも価格と管理負担軽減の観点から選択した。
手書き機能が使えない、HDMI端子が使えずミラーリングによる提示ができない、縦書きや画像・動画編集が上手くできないなど不便な点もある。
しかし本校では、教員はiPad、PC室はWindows、生徒はChromebookとし、すべてGsuiteにアクセスしていることから、使い勝手に関する大きな不満や抵抗が生じにくかったようだ。
GsuiteやGoogleドライブの活用に慣れるにつれ、教員は自分でデータを作成できるようになった。
国語科の教員は、ドキュメントで共同編集したり、地歴公民では、スプレッドシートで同時にコメントを書き込みテキストマイニングで表示したり、英語では、絵を見ながら英語で資料を作成したりなど、これまでの授業ではできなかったことが始まった。
3月からの休校期間でも活用している。教員は掲示板に教材や課題を掲載し、オンラインによる対面授業にも挑戦。英語科では単語テストを実施。体育では動画をアップしてコメントしている。
休校期間中は、毎日の体調や検温、学習時間の報告をGoogleフォームで提出・集計しているので報告業務も効率的だ。
ChromebookとGsuiteにより、授業の幅が広がった。生徒は、ネットを活用することで、より主体的になっている。こんなことがしたい、というイメージを持つ力を育んでいきたいと考えている。【講師】近畿大学附属豊岡高等学校・中学校ICT担当教諭・奥田幸祐氏
【第8回私立公立高等学校IT活用セミナー・大阪:2020年3月7日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年4月6日号掲載