神奈川大学附属中・高等学校では、大学附属校の強みを生かし、大学見学会や学部学科説明会、1日神大生ほかの高大連携を実施している。
神奈川大学と連携したプロジェクトとしては、DNA遺伝子実験講習や宇宙エレベータープロジェクトに取り組んでいる。
小林副校長は、同校の情報教育の変遷と成功事例について報告した。
本校の情報教育は、1989年にスタート。2000年には校内LANを整備し、2003年には教科「情報」の授業を開始した。2013年に全教室に電子黒板を導入している。
2016年に、目標を示したICTプロジェクトロードマップを作成した。
無線LAN整備、サポート体制、人員配置、教員研修、教育課程への対応など今後の方向性を示し、2021年度までに無線LANを1300人程度が無理なく使うことができる環境整備を目標に設定。
これを2017年に予算化した。ICT教育が目指すものは、授業デザインを見直し、効率的かつ深い学びを展開することにある。
2017年度の整備は、教員用タブレット端末、サポートデスク体制など。
教員研修は年8回程度実施した。
2018年度に中学3年の全生徒にタブレットPCを導入。300台以上がアクセスしても問題ない帯域を確保した。
ICTサポートセンターを設置し、サポートデスクも2人体制とした。
2019年度には中2~高1で1人1台のタブレットPC活用を開始。
2021年度には中2~高3までタブレットPCが行きわたる計画だ。
タブレットPCを破損した生徒には代替機で対応できるように、中学2年生は5年保証、中学3年生は4年保証の保険に加入している。
生徒は、朝のホームルーム時などに自分のタブレットPCで担任からの連絡事項を確認している。
学力の三要素の中でも「基礎的な知識・技能」「思考力・表現力・判断力」は、普段の授業の中で培うものである。
今後、生徒の第一志望を叶えるためにも「主体性・多様性・協働性」を身につける必要がある。
そこで、「主体性・多様性・協働性」育成を目的に、ICTを活用した指導と学習を実施。
「発見学習・問題解決学習」、「協働学習・グループワーク」、「発表・プレゼンテーション」などをさらに活発に行うこととした。
特に「教材の配布や宿題などの学習管理」を生徒に体験させたかった。
授業ではOffice365や授業支援アプリ「ロイロノート」、eラーニングシステム「College Pathway」、クラウドサービス「Classi」などを活用している。
ロイロノートは、教員から生徒のタブレットPCに教材を配信し、生徒は作品提出やプレゼンテーションまで、シンプルな操作で簡単に使える。Office365のOneNoteは、Youtubeのリンクを貼ったレジュメなども送ることができる。
OneNote Class Notebookで資料を共有し、生徒が各自のOneNoteに実験記録をまとめている。
生徒1人ひとりの学力を向上とともに、4技能の育成やeポートフォリオなど、新大学入試制度への対応も目指している。
国語ではClassiやEdmodoで読書記録の管理や小テストの配布、CollegePathwayで古典文法問題の演習などを実施。社会では、ロイロノートで意見交換などを行い、OneNoteに授業プリントを貼り付け、メモをとるなどで活用。理科はロイロノートで生徒間の情報を共有し、PowerPointやKeynoteを使ってプレゼンテーションを行う。
技術ではOffice365で毎時間、授業レジュメを配信。宇宙エレベーターでロボットプログラミングも行う。
英語ではClassiやEdmodoで課題の提出やプリント配布を実施している。
200人以上がPCを使うと無線LAN環境が不足して動かなくなることもあり、対策を考えているところだ。
今後も、ICT教育で生徒自らが主体的に取り組む力や自己肯定感、自分の将来を描ける力の育成に取り組む。
公開授業では、他校の教員にもICTを活用した授業を広く公開しており、今年度は11月2日に実施する予定で、全校をあげて実践を積み重ねている。【講師】神奈川大学附属中・高等学校・小林道夫副校長
【第7回私立公立高等学校IT活用セミナー・東京:2019年7月26日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年9月9日号掲載