7月26日、弊社主催で「第7回私立公立高等学校IT活用セミナー」を東京都内で開催。関東地区の高等学校におけるICT環境と活用について報告した。
2018年に創立30周年を迎えた鹿島学園高等学校は現在、校内無線LANを整備済で、全教室に電子黒板や書画カメラ、ノートPCを導入している。デジタル教科書などを格納したコンテンツサーバを設置するなど、校内のICT化が進んでいる。
同校では、全教室に電子黒板と書画カメラを設置してから1か月程度で、全教員が使うようになったという。こうした環境整備を後押ししたきっかけが、プロジェクションマッピングの取組だ。
谷口教諭は、その経緯を報告した。
2018年の創立30周年の記念式典では、体育館前面全体を使ってプロジェクションマッピングを上映。30年前と今を映し出した。
これは校内外で大きな反響を呼び、生徒の愛校心や誇りを刺激するとともに、教員や生徒にICTを主体的に活用したいという思いが生まれた。
ICTが感動を生み出す創造的なツールであると実感できたことが、ICT活用の意欲を引き出した。
プロジェクションマッピングは「誰でもできる」「どの学校でもできる」ことを念頭にして、授業用の2台のプロジェクターと教室のノートPCを使い、PC標準のマルチモニタ機能でワイドな動画を上映した。
動画はパワーポイントで作成できる。写真やテキストなどを配置し、アニメーション機能などで動きを入れ、エクスポート機能の「ビデオの作成」で簡単に動画ファイルを出力できる。
上映では、全画面表示だとマルチモニタ機能が有効にならなかったため、ウインドウを拡大して表示した。
本校における「教育の情報化プロセス」の特徴として、次の5つがある。
▼全教員を対象に校内でICT機器体験会&校内コンペを実施、▼全教員にPCレスの授業を推奨、▼全教員がどの教室でも手ぶらでICTを使った授業が行える環境整備 ▼外部に事例を積極的に発信して全教員の自信を醸成、▼プロジェクションマッピングでICTの魅力を全教員と全生徒で共有する。
キーワードは「全教員」だ。
教員研修がうまく進まない、予算確保が難しい、専門人材の不足など、教育の情報化に向けては多くの課題がある。
そこで、セキュリティ面以外は研修不要で、誰でもできることからスタートすることとし、「ICT活用は必ずしもPC必須ではない。PCを使わなくてもICTを活用した授業が行える」というメッセージを発信することとした。
初期段階では、書画カメラと電子黒板の活用を推奨した。
デジタル教材作成やICT活用の習得に教員のパワーを使うのではなく、「主体的・対話的で深い学びを授業で行うために何をすべきか」を考えることに、教員の経験と知恵を注いだ。
主体的対話的な学びのために、まず「電子黒板に何を映すか」「生徒のノートをどのタイミングで映すか」などの視点から授業を改善することで、ICTを効果的に使うアイデアが次々と生まれた。現在では教員も生徒もICT機器に慣れ、次第にPCも活用する教員がいつの間にか増えている。
書画カメラに生徒の成果物を映すことで授業が変わっていった。
生徒のノートやプリントを映すと、授業の進度を落とすことなく参加型の授業を展開できる。さらに生徒は、自分のノートが全体に映されることを意識して、ノートテイクを工夫するようになる。
教員もICTの有用性が分かれば、PCを授業で活用したいと思うようなるのだということを実感した。教員がICTを主体的に活用するプロセスによって授業改革につながったと感じている。【講師】鹿島学園高等学校 情報管理部長・谷口俊郎教諭
【第7回私立公立高等学校IT活用セミナー・東京:2019年7月26日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年9月9日号掲載