7月26日、弊社主催で「第7回私立公立高等学校IT活用セミナー」を東京都内で開催。関東地区の高等学校におけるICT環境と活用について報告した。
二松学舎大学附属柏中学校・高等学校の阿部教諭は、高校1年「情報」の授業で行った、プログラミング言語「Python(パイソン)」を用いた統計学習の実践について発表した。
「学校で習う数学は生活には関係ない」と考える生徒がいたことから、統計学習を数学と関連付けて「情報」の授業で扱った。これにより、生徒の情報活用能力を強化できればと考えた。
授業前は、「問題が発生しても誰かが解決してくれることを期待して自ら行動しない」と自己評価する生徒が多かった。そこで、授業後に「課題を感じた時、数字を使って違和感を説明し、解決策を提案・説得できるようになる」ことを期待した。
本校は無線LAN環境が整っており、校内のほぼすべての場所でインターネットを使用できる。生徒には1人1台のタブレット端末を3年間貸与しており、Googleの「G Suite」を活用。Pythonは、2018年度の2学期の最後に5~6時間を使って取り組んだ。
Pythonは、AIやデータサイエンスと親和性が高い言語として注目されている。また、英語を読むことができれば、ある程度意味が理解しやすい点もメリットだ。
「生徒に新しいものを体験してほしかった」という面もある。ソフトの使い方を教えても、生徒が社会に出る時には、そのソフトはなくなっているかもしれない。将来、新しいソフトに出会った際に、ためらわずに使いこなす意欲と態度が求められると考えた。
統計学習は高校からの入学者で編成された4クラスで実施した。
プログラミング経験者はほぼおらず、家でPCを使う機会も少ないという実態を把握してスタート。従来、本校ではデータの実習はExcelを用いて行っていた。しかし、Excel特有の名称が理解できず、マウス操作にも苦労しており、授業時間内に分析した結果を考察するまでたどり着かなかった。
そこでPythonによるプログラミングでデータ処理をしたところ、操作がタイピングのみと単純であり、間違えた場合も間違った場所を見つけやすいことが分かった。
統計学習にあたっては、「知る」「理解する」「活用する」の3ステップで進めた。
はじめに統計とは何か、統計の種類、データの簡単な分析方法を知ること。続いて身の回りの統計データを見つけ、読み解くことができるようになること。そして分析したデータの表現による影響と表現の特性をとらえ、適切に活用できるようになることを目標と設定した。
全5時間の授業で、はじめは基礎に重きをおき、2時間目以降はPythonを使いながらグラフの表示や代表値の計算を行った。
4時間目からはプロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)として、生徒をグループに分け、各グループで興味を持った内容を分析し、最後に他のグループに発表した。
Pythonを使用する際は、WindowsPowershellで起動、プログラムを一行ずつ打ち込み、その都度実行する。
はじめに「python」と入力するとPythonを使えるようになる。その後、統計を行うために「import statistics」と入力。「import math」と入力すると、数学の計算ができる。平均点を出すときは、平均を意味する「mean」を使う。点数をあてはめると、テストの平均点が出てくる。
PBLでは5~6人のグループになり、身近な課題の改善策を提案することをプロジェクトとした。
ブレーンストーミングや話し合いで身近な課題を見つけ、その要因として考えられることをあげる。生徒は、考察したことが本当に要因だったのかどうかについて、分析。最後はスライドに資料をまとめて発表した。
昨年度は時間不足の面もあり、2019年度は9月から情報と数学科で連携して行う予定だ。【講師】二松学舎大学附属柏中学校・高等学校・阿部百合教諭
【第7回私立公立高等学校IT活用セミナー・東京:2019年7月26日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年9月9日号掲載