教育家庭新聞は第57回教育委員会対象セミナー・金沢を3月27日(水)、金沢市内で開催した。5人の講師の講演概要を報告する。なお講演者の肩書は3月末現在。
北教諭はジグゾー学習の方法やそのポイントをワークショップ形式で話した。参加者は「これまでジグゾー学習について難しく考えすぎていたかもしれない、試してみたいと思った」と語った。
ジグゾー学習に入る前の「話の内容」は話し合いを深めるために重要だ。もともとの概念がないと学びが産まれない。その概念が崩れたり強化したりすることで学びが成立する。
そこでジグゾー学習の以下の情報を提供した。「学力格差が激しく人種も多く混在しており協働学習が成立しなかったことから、アメリカのある小学校で始めたところ、人間関係の基盤作りに役立った。日本では、準備が大変、盛り上がるが深めることが難しい、話し合いが深まらない、などの理由で実践は少ない」
次に「今日はジグゾー学習の何を学びたいのか。隣の人に『あなたはジグゾー学習で何を学びたいのですか』『もう少し教えて下さい』と聞き、その相手の話した内容を、4人グループを構成して自分のことのように1分間交代で説明し、ありがとうございましたと一言言ってから元の席に戻って下さい」と指示。ほぼ初対面だが、あちこちで笑い声が聞かれるなど会場の雰囲気も変わり始めた。
次は「今聞いた話を参考にして、再度、『学びたいこと』を1分で書いて下さい」と指示。他の人の考えをきっかけに、自分の考えを修正していく過程を体験した。
さらに参加者は「1人で『言』のつく漢字を10個考え、書き終えたら挙手」、その後「2人で鉛筆を1本使って『木』のつく漢字を考え、書き終えたら挙手」の2つを体験。1人で取り組んだときと2人で取り組んだときの気持ちについて考えさせた。1人での取組の際は緊張感が生まれたが、2人で取り組むと笑顔が出やすく温かい気持ちになりやすい。ジグゾー学習ではこのようなことが多く起こる。ジグゾー学習が人間関係の基盤作りに役立つ学習形態である考えると、このような形もジグゾー学習であると考えることができる。1人ひとりの思いは十分にバラバラな情報であり、話し合う価値があるもの。自分たちの持つリソースでジグゾー学習に取り組むことができる。
発話量が平均であることも重要だ。そこで「1分」など区切りを設定して、話したい人、話せる人だけが話す状況を防ぐ。1分では不足で話が途中で終わったとしても「続きが気になる」「もっと聞きたい」などの感情が生まれる点もメリットになる。
競争を促す声かけをするのか、協働を促す声かけをするのかで児童の作業内容や心理が変わる。「早いね!すごい」は競争を促す声かけであり、学び合いが歪むことがある。
ジグゾー学習の手法を話し合い学習に取り入れることで、児童は「授業が楽しい」「次はこんなことについて話し合いたい」と言うようになった。中学生になった児童は「中学校では先生の話を聞くだけでつまらない」と言ってくる。学び、考え、話し合い、自分で答えを生み出す体験は児童にとって「楽しい」ことであると実感できた。
これはあらゆる教科に応用できる。例えば美術では作品について、どんなところを工夫したの?などインタビューして伝え合うことができる。国語で世界について学んだ際には全119か国の担当をくじ引きで決めて1人1国ずつ調べて学び合った。このときの問い「なぜ世界のことを学ぶのだろう」に対する児童の解は様々で感動的なものも多く、次の学びの動機が生まれるなど「学びに向かう姿」が育まれていると感じた。話し合いを前向きに捉えることができると、ICTを活用した学習をより有効に発展させることができるのではないかと考えている。【講師】白山市立蝶屋小学校教諭・北洋輔氏
【第57回教育委員会対象セミナー・金沢:2019年3月27日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年5月13日号掲載