教育家庭新聞は第57回教育委員会対象セミナー・金沢を3月27日(水)、金沢市内で開催した。5人の講師の講演概要を報告する。なお講演者の肩書は3月末現在。
36年間にわたり公立学校の教員や管理職、行政職に携わり、現在、文部科学省・統合型校務支援システム導入実証研究事業の委員長を務める玉置氏は、学校活性化の取組について話した。
統合型校務支援システム導入実証研究事業では、市町村と県の円滑な連携手法について検証して全国普及を目指すもの。現在4自治体で検討・実証中で、2019年3月18日付「学校における働き方改革に関する取組の徹底について(通知)」では、統合型校務支援システムの導入と県・市町村連携による共同調達や運用の推進が求められており、本事業では豊富な事例を提供していきたいと考え、知恵を出し合っているところだ。
統合型校務支援システム導入の最大の目的は、学校経営力向上だ。これをうまく活用することで、チーム力を上げ、学校説明力が増し、さらに働き方改革も推進できる。
校務支援システムについては平成10年から関わっている。当時、学校では時間割や成績集計をExcelで行っている、というのが最先端。企業では既にグループウェア等が一般化しており、同様に学校向けの仕組みが必要であると考え、企業と開発に着手した。
朝の打ち合わせ時間を短くしたいと考え、始めたのが連絡掲示板だ。これにより仕事が大きく変わった。朝の打合せでは、掲示板に記入したものは言わず、生徒指導や保健指導など文書で表せないことを伝えるようにした。2か月先に連絡したいことは1年通して入れておけるため、引継ぎも効率的に進められるようになった。
意見交換についても効率的に進めることができた。インターネット上で既に出た意見を読みながら追記できるので意見交流が活発になり、記録にも残る。記録やまとめ、集計の手間を大幅に省くことができた。職員会議はペーパーレスになり、次年度も活用できるデータが蓄積されていった。各自の予定を共有できるので旅行命令書なども新たに文書を起こす必要がなくなった。
当時存在していなかった出席簿の仕組みも構築。紙の出席簿をなくしてPC上で行い、データを通知表や指導要録で共有できるようにした。
様々な仕組をデータ共有することで朝の時間が生まれた。何か新しい価値を生み出せることはないかと職員にアイデアを募り、1分間スピーチを実施。当時、道徳の授業に力を入れており、教員の話術の向上につながり子供の心に染み入る話ができるかもしれないということで出たアイデアだ。
これが予想以上に良い結果につながった。休みの多い教員がその理由をスピーチしたところ、それが生徒にも伝わって新しい信頼関係の構築につながり、学校全体が変わっていった。生み出した時間をどう使うか、は重要だ。
ネットワークを使い始めると、様々なことができることがわかってくる。今どこでだれが授業をしており、空き時間がいつなのかもわかり、電話応対の効率化を図ることができた。
保健室でもグループウェアを活用。養護教諭が保健室来室状況を入れることで、教員は情報を共有できる。保健室には子供の様々な情報が集まるが、これまでそれを共有する手立てがなかった。養護教諭は一人職だがこれをうまく補完して職員室とつなげることができるのが校務支援システムである。
教室の大型提示装置には、スクールネット機能で、掲示板情報の一部を教室でも共有・掲示できるようにした。これにより、生徒への単なる伝達事項は大型提示装置を見ればすむようになった。
通知表はファイル化。1学期分6ページで修了証を入れると1年で20ページになり、保護者とのコミュニケーションを通知表でとることができるようになった。
新学習指導要領では「学びに向かう力」が求められている。保護者や子供にとって学びをフィードバックするプラットフォーム機能が今後一層求められてくる。これらの取組は新学習指導要領に適うスタイルであると感じているところだ。さらに今後、ポートフォリオ機能などが校務支援システムの機能に加えられていくだろう。【講師】岐阜聖徳学園大学教授・玉置崇氏
【第57回教育委員会対象セミナー・金沢:2019年3月27日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年5月13日号掲載