教育家庭新聞は第57回教育委員会対象セミナー・金沢を3月27日(水)、金沢市内で開催した。5人の講師の講演概要を報告する。なお講演者の肩書は3月末現在。
「協働学習」とは、確かで幅広い知識を基に、仲間とともに学び合い、納得解を導き出せる力を育むもの。そこで山口教諭は、動画クリップを情報提供のメインとし、友達の話を聞かなければ納得解を導き出すことができない、というジグゾー学習を模した形の事例を報告した。
社会「農業のこれからを考える」単元では、課題を「日本の農業は発展する可能性はあるのか」とし、農業の目指すべき姿や現状などの情報を伝え合う。その後、各自の結論を仮決定して交流し合ってから結論を決める。
情報提供にはNHK for Schoolの動画クリップを活用。インターネットを使う調べ学習は情報が広がりすぎるためだ。日頃からグループ学習でよい話し合いの姿を動画で撮影しており、共有するようにしている。また、正解のない課題に対して議論を通して解を導くことは今後、必要な力であることも伝えている。
班は4人構成とし、二分割して「発展の可能性がある」事実と「可能性が少ない」事実を調べる担当に分けた。自分が理解したうえでその情報を伝え合い、互いに理解し合わなければゴールにたどりつけないようにした。
1ペアにつきタブレットPCを使って動画を3つ視聴。 今回動画で提供した情報は、米の消費量が減少していること、農業従事者が減少していること、ITが米作りに使用されていること、米の消費を促す取り組みなど。タブレットPCは1人1台環境あるが、動画の視聴能力の個人差を埋めるため、2人に1台でイヤホンを分岐して視聴した。説明する際に必要になりそうな場面はキャプチャして静止画として保存しておく。
調べる時間の設定は大変重要だ。浅い理解では浅い学びになる。相手に伝えるときに自分の情報があやふやだと相手から質問がくる、という経験を繰り返している。
動画を視聴した後は付箋に情報を書き出す。子供は多くの情報をメモするが、それをすべて相手に伝えることは情報過多になる。課題と結びつきの近い情報を伝えられるよう、伝えるべき情報を付箋10枚までに取捨選択させた。
さらにそこから、考えの決め手となった事実2つを選択。相手ペアの説明を聞き合い、それを基に自分の解を導く。その後自由に交流して様々な人の意見を聞き合う。
ここで工夫している点は「心情カード」で自分の考えをひと目でわかるようにすること。「同じ色同士で交流すると考えが確かになる、違う色同士で交流すると異なる見方ができる」と伝えている。
カードではなく心情円盤を使うこともある。円盤であれば、何割くらい賛成なのかなど自分の「迷い」を表すことができる。なぜ迷っているのか、どんなことを考えているのか、聞きたくなる仕掛けとして活用を始めた。この学習は、米の消費減を防ぐため、消費を促す動画を作成して校内放送で流すなど、問題を解決するための行動を起こすことにもつながった。
動画を活用したジグゾー学習は、タブレットPCがあるからこそスムーズにできる。タブレットPCは可搬性があり、保存・共有ができ、多様な表現も可能。新しい授業の構成を支える良いツールだ。
202人の教員を対象にした独自調査によると、ジグゾー学習もNHK動画クリップも、若い世代の教員ほど知っており、興味を持っているが、実際にやったことがある教員は少ない。関心はどの世代も高く、タブレットPCの整備が進むことで、新しい学習方法に挑戦しやすくなると考えている。
プログラミング教育モデル校としての取組も始まっている。
1月に市からロボットの貸与を受け、教員研修をして3月に授業を公開した。1年生はOzbotでプログラミング体験、2年はカムロボット、3年生はScratchで物語を表現、4年生は社会に役立つプロブラミング、5年生はmicrobitでゲーム作りなど。市では「プログラミング教育ベーシックカリキュラム」を策定している。【講師】金沢市立大徳小学校教諭・山口眞希氏
【第57回教育委員会対象セミナー・金沢:2019年3月27日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年5月13日号掲載