教育家庭新聞は第57回教育委員会対象セミナー・金沢を3月27日(水)、金沢市内で開催した。5人の講師の講演概要を報告する。なお講演者の肩書は3月末現在。
2017年「公立学校情報化ランキング」において中部地区9県で小学校1位・中学校10位となった富山県氷見市のICT環境の整備・推進について、教育委員会の坂田氏が話した。
氷見市では2017年、ICTを効果的に活用することにより、協働的な学びを推進し、学習意欲を向上させること、思考力・判断力・表現力及び学びに向かう力を育むことを目標としてICT教育推進事業を予算化。整備を進めた。
高橋純准教授(東京学芸大学)をアドバイザーに迎え、ICT教育推進プロジェクトチームを立ち上げた。構成メンバーは学校関係者、教育委員会各部署、企業など。本プロジェクトにより、教育委員会総務課、学校教育課、学校、企業それぞれが役割分担を決め、ベクトルを一つにして進めることができた。
教育総務課は、大型提示装置や無線LAN整備などを推進。2017年度までに全小中学校・全普通教室114教室に大型提示装置の整備を完了した。タブレットPCは2015年度に小中学校各1校をモデル校に指定して1クラス分のタブレットPCを整備して検証。授業改善が進み、児童生徒の成績も向上するなど一定の成果が上がり、導入が可能になった。2017年度に462台のタブレットPCを新規に導入して計553台となり、全小中学校に1セット整備となった。各校への整備をほぼ毎年進めていたこと、モデル校で導入効果を示すことができたことなどが大規模整備につながった。
学校教育課では、ICT支援員などの人的配置や研修などを担当。ICT支援員会議を実施して各校の要望を整理し、必要な情報を学校に迅速に伝えるようにした。
教育総合センターでは、教員に対するICT活用力、ICT指導力の向上を目指し、研修を充実させた。
各企業による出前研修をすべての小中学校で実施したことで、ICTの効果についての理解を深め、授業での活用が積極的に行われるようになってきた。活用状況調査によると、1学期は全普通教室で大型提示装置を約2時間活用。2学期にはこれが3時間に増えた。タブレットPCについては、各学校において、1学期は1日1時間程度、2学期には2時間程度活用されていることが分かった。
活用事例も収集。1~2学期の実践から108事例が集まった。各事例を分類し、共有フォルダで閲覧できるようにしている。これらの事例を基に、情報活用能力の分類に関連づけた事例を掲載したICT活用リーフレットも作成。授業での活用を支援している。
ICT教育推進協力校3校(小学校2校、中学校1校)では、情報活用能力の体系表を作成し、小中学校が連携した取組みを推進した。また、それぞれの学校では公開校内研修会を開催した。
これらの取組みにより、学校現場からは、「学習に対する主体性が高まった」、「発表する場が増え表現力が育った」、「繰り返し学習を効率的に進めることができる」などの声が届いている。
例えばある小学校では各班で分担してタブレットを持ち込み、2つのマーケットを調査。それぞれの店の特徴や良さを話し合う授業を展開した。
朝学習の際にタブレットPCを使ってドリル学習を実施した中学校では、登校した生徒から充電保管庫からタブレットを取り出して各自でドリルを始める。教員が出した課題を終えたら他の問題に取り組む。授業でタブレットPCを1人1台で活用する際、充電保管庫からの出し入れに時間がかかるが、朝学習では各自で進めることができるため、運用もスムーズであるというメリットがあった。
次年度は、プログラミング教育を推進していく予定である。その準備として、先進地視察も実施。淡路市と東京都新宿区のプログラミング授業などを中心に視察した。ICT教育推進委員会では、プログラミング教育に関する調査・研究を行い、実践例を紹介していく。協力校での実践もさらに積み重ねていく考えだ。また、大規模校にタブレットPCを追加配備して「3人につき1台の可動式PC」を実現する予定だ。
【講師】氷見市教育委員会学校教育課副主幹・坂田和彦氏
【第57回教育委員会対象セミナー・金沢:2019年3月27日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年5月13日号掲載