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教育ICT

基礎学力の担保〝公教育〟は最後の砦<東北大学大学院教授 堀田龍也氏>

2018年10月1日
第51回教育委員会対象セミナー・福山

8月22日、広島県福山市内で第51回教育委員会対象セミナーを開催。夏休み後半ということもあり、西日本豪雨の影響で交通網が一部麻痺しているにもかかわらず小学校教員を中心に約100名の参加者があった。

基礎学力の担保〝公教育〟は最後の砦

東北大学大学院教授 堀田龍也氏

東北大学大学院教授 堀田龍也氏

中央教育審議会初等中等教育分科会及び教員養成部会で委員を務めている堀田教授は、中教審の議論と新学習指導要領のポイント、求められるICT環境整備や活用について講演した。

AIの急激な進展もあり今は存在しない職業が今後、一層増えていくことが予測される。「将来何になりたいのか」と聞くこと自体が子供のキャリア形成を阻害する可能性すらある状況の中、キャリア教育をどう進めれば良いのか。加えて日本は、世界に類を見ないスピードで人口減社会に進んでいる。この特殊性を意識した教育も求められる。

日本は江戸時代中期から人口が増え続けていた。特に明治維新後から急激に増え、平成16年の1億2784万人を境に急激な下降ラインに変わっている。今の教員の多くは「急激な人口増」の最中に教育を受けている。

人口が上り調子のときと高齢化を控え下がる一方であるときでは、考えるべきこと準備すべきことが大きく違う。それが、自らが受けた教育をなぞっていてはこの特殊事情に対応できる人材の育成にはつながらないことの理由である。その認識が出発点になる。

地域による違いはあるが貧困の問題も深刻だ。意識の高い人はインターネット上のリソースを上手く利用して学び続けることができる。「そうではない人」にについて考える「最後の砦」が公教育だ。PISA2008(OECD)の分析結果によると、日本の課題は「散らばり」にある。高学力層と低学力層の2層に分かれ、「平均」値の層が薄い。この低学力層の多さをどうすべきかが深刻な課題で、基礎学力の担保は国家的にも大きな重要事項である。

新学習指導要領は、大学入試改革を想定した内容である。現在の小学校6年生が入試を受ける2024年度の大学入試センター試験では、PCを使ったテストも導入される。外部テストも採用される一方で、1人ひとりのポートフォリオが重要視される。

これに向けて高等学校の教科も再編。大きく改革されている。例えば歴史は近現代からスタート。学問的な並びではなく、知っていなければならないことから学ぶ。

学習の基盤となる資質・能力

新学習指導要領には、様々な学習の基盤となる力として「言語能力」「情報活用能力」が各教科で身に付けるべき力として位置付けられた。

言葉の豊かさは全ての基盤。

情報活用能力とは、情報を整理してポイントをまとめてわかりやすく伝える力である。検索して様々な情報を得て判断する力はどんな職業でも重要。その力を学校段階でも身に付けるということだ。

資質・能力 3つの柱

生きて働く「知識・技能」やどんな状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成、学びを人生や社会に活かそうとする「学びに向かう力・人間性」が資質・能力の3つの柱である。

知識・技能が身に付いていなければ「次につながる」表現活動も討論も成立しない。連続性のない単発の「表現」「討論」で終わってしまう。「テストで解けるが後で忘れる」知識・技能ではなく「あのときはこう考えたからこれはこう考える」などの「転移」が起こる「生きて働く知識・技能」を身に付けることが目標だ。

宿題の概念も変わる。「学び続ける力」「転移する力」を育むための新しい「宿題」が求められる。

「対話」が一層重視されている点は多くの教員の知るところだと思うが「対話が増えたから良かった」ではなく、何のために「対話」するのかを子供自身が認識したうえで「対話」できることが重要だ。

さらに今後、重要になる力は「問題解決力」だけではなく「問題発見・解決力」である。

問題となる前に気付き、問題が起こらないように解決に向かう力、もしくは、より豊かな生活の実現に向けて解決すべき必要な問題を発見し、実現に向けて進む力である。そのためには様々な情報を収集して判断すること、そのように判断した理由を、ポイントをまとめてわかりやすく伝える力が求められる。

ICT環境は必須

この一連の流れにおいてICTを活用できる環境は必須。

これは、借り物や共有の状態で「数回」やった程度で身に付く力ではない。日常的な活用と繰り返しが必要だ。

基本的な操作の習得やプログラミングを体験しながらその素養を育む学習活動など新学習指導要領には「何が重要でそれをどのように学ぶか」が記述されている。

そのための学校環境として文部科学省が提示したものが「教育ICT環境整備指針」である。

【講師】東北大学大学院教授 堀田龍也氏

【第51回教育委員会対象セミナー・福山:2018年8月22日

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年10月1日号掲載

  1. 竹原市立中通小学校教諭・清水大助氏
  2. 武田中学校武田高等学校教頭・松本達雄氏
  3. 湖南市教育委員会指導主事 長谷川洋介氏
  4. 東北大学大学院教授 堀田龍也氏
  5. 福山市立日吉台小学校・小林裕子氏
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