8月22日、広島県福山市内で第51回教育委員会対象セミナーを開催。夏休み後半ということもあり、西日本豪雨の影響で交通網が一部麻痺しているにもかかわらず小学校教員を中心に約100名の参加者があった。
創立50周年を迎えた武田中学校 武田高等学校(東広島市・竹村豊子校長)では平成28年度から、新中1と新高1に1人1台の情報端末の配備をスタート。3年目を迎え、広島県初の「全校生徒1人1台情報端末活用」体制となった。同校の取組について松本教頭が講演した。
竹村校長就任時、「一斉授業では新しい学びは成立しない。平成28年度の中学校及び高等学校の新入生から情報端末の1人1台活用を始めよう」という方針が平成27年度に決定。その年の8月にICT委員会を設立して機器の選定などにあたり、生徒に先行して10月、教員用端末(iPad)20台を配備した。
生徒の視覚に訴える授業を念頭に基本操作の習得から研修もスタート。このほかグループウェアやWebアンケート、クラウドの活用、ポートフォリオ講習など様々な研修を頻繁に行っている。以後、職員朝礼もオンライン上で実施。修学旅行のアンケート集約もすぐにでき、先日の豪雨の際には電話はほぼ不要で安否確認を端末上で迅速にできた。授業活用アプリは端末上で手書きができるので、国語教員も添削指導などに活用できると好評である。
生徒用端末もiPadとした。理由は、起動の速さ、電池の持ちの良さ、アプリの充実、セキュリティが比較的強固でオンオフが早い点など。充電は自宅で行うため、一日電源が持つことが必要。校舎がコンクリートで工事が困難なことから無線LANではなくセルラータイプとし、生徒用は3GBで契約。Appストアを非表示とし、基幹アプリとして生徒連絡機能、アンケート機能、学習機能、学習記録機能などを搭載した。
本校は8割の生徒がスクールバスを使っており、バスの遅延などの連絡にも活用でき、バス内でも学習できる。管理はMDMで、紛失時や故障時にも遠隔操作できるようにした。フィルタリングやアプリ制御などもMDMで対応。これらはNTTとのリース契約。買い取りになると故障時には個別対応が必要で時間がかかる。
最も重視したものが「双方向でAL授業」「生徒の個別学習」だ。英語によるプレゼンテーションを動画で撮影する宿題では日本語訳のテロップを流すなど工夫ある作品が出来上がった。理科の実験では、1人ひとりの考えをグループで共有して1本のプレゼン資料を作成し、発表。1人1台あると、様々な展開が可能になる。活用も頻繁になり、生徒のプレゼンテーション能力は明らかに上がった。
スクールバスの時間があり放課後学習などを設定しにくいが、iPadによる家庭学習や反転学習などでも活用している。
昨年度は全普通教室に電子黒板機能付きプロジェクターも導入。AppleTVを使って教員用端末画面を提示している。
iPadは娯楽のためのものではなく学びに大いに活用できるもの。それを在学中にたっぷりと体験してほしいと考えている。ICT委員会ではセキュリティポリシーを策定し、ルールブックも作成した。
活用推進のポイントは、全教員の「足並みをそろえる」ことを目的とせず、できる部分からどんどんやっていくこと。トラブルに対応できる教員が少ないなど課題もあるが、負の側面ばかり見て導入しないことは大きな機会の損失である、というのが2年間活用してきての実感である。
【講師】武田中学校武田高等学校教頭・松本達雄氏
【第51回教育委員会対象セミナー・福山:2018年8月22日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年10月1日号掲載