2月24日、大阪市のCIVI研修センター新大阪東で、第4回私立公立高等学校IT活用セミナーが開催された。ICT環境整備や機器の活用について、5人の講師によって行われた講演の内容を紹介する。
関西学院千里国際中等部・高等部の米田謙三教諭は、英語を中心とした授業でのICT活用について話した。
同校は同じ敷地内にK―12のインターナショナルスクールを設置している日本で唯一の学校。教科によってはインターナショナルスクールと同じプログラムを学ぶ。探究・課題解決、コミュニケーション、自立・自律そして貢献、多様性の尊重の4つの力を身に付けるため、21世紀を見据えた実験校として様々な取組を行っている。
IBDP(国際バカロレアディプロマプログラム)では平成25年度からディプロマを取得できるシステムを開始。
例えば中学1・2年では日本人教員が週4時間、ネイティブ教員が週2時間の授業を担当。3年では週5時間全てをネイティブ教員が担当。日本語は禁止で授業はディスカッションなど。高校3年間は学期ごとに多彩な選択肢から授業を選ぶ。同校では一般生徒と英語圏からの帰国生徒では英語力に大きな差があり、現状に合わせた指導を行う。
探究型の学び、アクティブ・ラーニング(A・L)では、7年生(中1)から12年生(高3)まで課題研究に取り組み、12年生は全員1人1本論文を書かなければならない。プレゼン発表の日を設け、中学生・高校生全員がそのプレゼンを聞くことになっている。
29年度より10年生(高1)からiPadによるBYODを始めた。どういう形にすれば生徒たちが家庭でも学びやすい環境になるのかを考え、BYODが最適と判断した。校内無線LANも整備。教員は「Google Apps for Education」を授業で活用している。
A・Lは様々な教科で行っている。生徒にはなぜ学ぶのか必ず聞く。まず動機づけが必要。英語では4技能の習得に向け、題材選びなどをどうするか、どう使うかを考えることが必要になる。
タブレット端末を使う際に困るのが辞書。辞書という役割を持ったものを、教員が指示する必要がある。どういうアプリが効果的で、どういう使い方が生徒にとって良いのかという視点で考えることが大切だ。
ICT活用には、講義主体タイプ、ドリル主体タイプ、ゲーミフィケーションタイプ、インフラ一括提供タイプ、遠隔授業支援タイプの5タイプがあり、ここに機器、指導、支援員を絡める。これらを授業の中で活用し、一斉・協働・個別学習にどう取り入れ、主体的・対話的で深い学びをどう実現して思考を深めるかが重要。修正、再考をする振り返りも学びに欠かせない。理解させることと、考え、表現させることをいかにミックスさせるかがこれからの授業。教科横断型で探究する活動が必要になる。
新学習指導要領で身に付けるべき知識・理解・技能という確かな学力の一方で、生徒の思考表現・判断という豊かな学力をいかに育てるか。家庭学習と知識の定着化が欠かせない。ICTで生徒の思考力を育てる教材・コンテンツを活用しながら、ICTに振り回され過ぎないことが求められる。
【講師】関西学院千里国際中等部・高等部・米田謙三教諭
【第4回私立公立高等学校IT活用セミナー・大阪:2018年2月24日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年4月2日号掲載