2月24日、大阪市のCIVI研修センター新大阪東で、第4回私立公立高等学校IT活用セミナーが開催された。ICT環境整備や機器の活用について、5人の講師によって行われた講演の内容を紹介する。
東海大学付属仰星高等学校・中等部で情報管理室長を務める阿部守勝教諭は、同校のICT環境整備の事例について報告した。
同校は平成25年度からICT環境の整備を開始。27年度までに同校は文部科学省が示した「普通教室のICT環境整備のステップ」で、一気にStage4相当まで整備した。「外堀が埋まり、まず形から入った」と阿部教諭。
各普通教室には天吊スクリーン、プロジェクター、AppleTV、無線LANのアクセスポイントを設置。体育館や研修棟にも導入した。校内LANの1GB化工事も行った。トラブルが起こらないように、業者としっかり話し合って進めることが大切。なぜ必要かを説明して上層部の理解を得て、予算を獲得することが必要だ。
タブレット端末にはOSやアプリの安心感、長持ちするバッテリーなどからiPadを選定。26年度に一部教員用と中等部に共用として初めて導入し、うち1クラスで1人1台活用の実証を開始。27年度から中等部での1人1台環境の整備を始め、28年度から教員が1人1台環境となり、29年度には中等部の生徒全員が1人1台環境となり、高等学校の導入を開始した。現在は900台弱が稼働している(iPadは保護者負担)。
校内での推進に向けて、26年度に「教育のICT推進委員会」を設立。学校としてのスムーズな意思決定を行える体制が望ましい。ICT支援員の存在も不可欠。台数が多くなると、教員だけではメンテナンスやサポートができなくなる。
研修体制としては、26年度から教員向けに操作研修やアプリの活用研修を実施。29年度は5回実施した。28年度からは、公開・研究授業を教科会の時間に実施することで、全教員が参加できるようにした。他校の視察も多数実施した。先進校の成功事例を自校にうまく合わせて活用することがポイントだ。教員がICTを活用した授業を行い、生徒の学力が向上することで、保護者の満足度が向上する。教員のICT活用の学習指導力向上を図る必要がある。
同校では29年度に、「教育のICT化ビジョン」を策定。主体的・対話的で深い学びを実現し、高度情報化社会で力強く活躍するような生徒を育成することを目的に、ICT化を進めるとした。最も難しいのは、生徒の主体的なICT活用のために、教員が学習活動や評価方法の全てを見直す必要があること。カリキュラムマネジメントも含め、学校を挙げて考えなければならない一大事である。
生徒の活用ルールは、社会に出る前に情報モラル、情報収集能力、情報判断能力を身に付ける前提で、事故などの重大なリスク回避のための最小限の設定にとどめている。
今後、研究者等の専門家とのコラボレーションなどで、すべての授業をA・L化することを図り、その中で生徒のiPad活用が必然になるという形を目指したい。教員研修は講義型ばかりではなく、ワークショップ型や、自己研鑽できるA・L型への変更を試みている。
【講師】東海大学付属仰星高等学校・中等部・阿部守勝教諭
【第4回私立公立高等学校IT活用セミナー・大阪:2018年2月24日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年4月2日号掲載