2月24日、大阪市のCIVI研修センター新大阪東で、第4回私立公立高等学校IT活用セミナーが開催された。ICT環境整備や機器の活用について、5人の講師によって行われた講演の内容を紹介する。
兵庫県立明石城西高等学校でICT利活用推進委員長を務める竹谷将幸教諭は、同校が平成27年度からの3年間、県教育委員会の指定を受けて取り組んでいる「ICT利活用実証・研究事業」でのICTを活用した授業実践等について報告した。
グローバル探求コース1クラスで、「確かな学力の育成」をテーマに、ICTを活用したわかる授業で、主体的な学びや協働学習等を通して生徒の確かな学力の育成を図ることが目的。そのため、知識記憶型の学習から経験記憶型の学習への転換を目指した。まずプロジェクター、AppleTV、マグネットスクリーン、無線LANアクセスポイント、実物投影機を設置した。
27年度入学のグローバル探求コースの生徒40名が対象。1人1台iPad環境を活用し、1年生の2・3学期、2年生には反転授業を行った。
数学では教科書に載っている問題の解説動画を作り、生徒のiPadに配信。生徒は自宅で見ながら前日に予習し、翌朝登校して解いた問題のプリントをPDFファイルにして教員のiPadに送信。授業ではグループ活動での解き方を相談して考えたり、発表したりした。授業のメリットは他の生徒とすぐに相談できること。経験記憶、深い学びとなり成績につながった。PDFファイルでの配信は、印刷の手間が省ける上、プリント配布で起こる紛失がないなどのメリットがある。定期考査のクラス平均点を反転授業未実施のクラスと比較すると、未実施のクラスより高く、差が広がっていった。
英語ではデジタル教科書を使い、音読の練習やiPadでのプレゼンテーションの指導、総合的な学習の時間での調べ学習をした。予習をPDFファイルにして教員のiPadに送信したり、教員用の予習ノートを配信し授業中の板書を無くしたりもした。予習により授業では発音など細かな指導やディベートやプレゼンテーションの準備段階で伝わる考えのまとめ方等により時間を割くことができた。
自宅で動画を見て理解し、わからない点をまとめ、授業で質問する流れが確立し、宿題の内容に変化が出てきた。
年2回行う生徒へのアンケート(1ほとんどそう思わない・2あまりそう思わない・3少しそう思う・4わりにそう思うの平均)によると、「授業で自分が抱える課題について理解できていると思いますか」では、1年次10月の2・59から3年次7月には3・20となり、自己分析する力が高まってきた。「タブレット端末を使って、発表するためのスライドや資料を作ることができていると思いますか」では3・26から3・70に、「反転授業によって、学習内容がより分かるようになると思いますか」では3・31から3・59にそれぞれ上昇した。
全校に広げるために、27~29年度にグローバル探求コース以外のクラスにもプロジェクター、AppleTV、マグネットスクリーン、無線LANアクセスポイントを順次設置した。25年度に導入したiPad40台は共用で使用している。体制づくりは全教職員で取り組めるように考え、各教科に研修会や公開授業で中心となる「ICTリーダー」を置いた。教職員が講師となり機器やツール、アプリの操作・活用研修も実施。29年度には全教員がICTを使った授業を実践した。実践に際し、①教材・資料をプロジェクターで提示②ロイロノートで教材の配布③プレゼンテーション④リサーチ⑤写真・動画で記録・蓄積をする「城西スタイル」を決めた。
教員へのアンケートによると、「生徒の興味・関心を高めるためにPCや提示装置などを活用して資料などを効果的に提示する」では「ほとんどできない」が今年度0%になるなど、全体的にICT活用に関する意識は高まっている。
来年度の入学生からはiPadを自費購入してもらう予定。機器の老朽化による更新やメンテナンスを見越した実施計画の見直しや、職員研修をさらに充実させ、今後もICTを活用した授業実践を継続していく。ICTを単に使うことが目的とならないように、ICTを活用した学校教育の可能性を模索していきたい。
【講師】兵庫県立明石城西高等学校・竹谷将幸教諭
【第4回私立公立高等学校IT活用セミナー・大阪:2018年2月24日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年4月2日号掲載