今回の新学習指導要領の改訂の特徴は「大幅な教科再編がない」こと、「道徳の教科化、小学校プログラミング教育必修化、小学校英語教科化」であると述べる。
「大幅な教科再編がない」理由は、前回の改訂がうまくいっており、小中学生の学力が堅調で安定しているからだ。OECDでもその差の小ささは注目されている。それに対して高等学校の改訂は当時、大きくできなかった。その分も含めて今回、特に大きく教科再編が進んでいる。
「うまくいっている」と評価が高い小中学校だが、大きく変わった点もある。それが「学力観」だ。
教える内容は同じだが、身に付けるべき力が変わり、コンピテンシーベースになる。社会の変化についていける力、ではなく、社会の変革を導く力の育成が求められている。
「活用できる」知識が求められており、知識の質を変えることを目指している。「使えない」知識は、いつまでたっても「使える」知識にはならない。「使える」知識とするためには、教育法の変革が必要である、ということだ。
もう一つが「非認知能力」を「学力」とした点だ。
これまでは「特別活動」「学級活動」「委員会活動」もしくは「地域や家庭」等で育むものであり、重要な力ではあるが「学力」とはされていなかった。それを今回の学習指導要領では「学力」としている。
「知識」が多いことが人生の成功にはつながらず、関心・意欲・態度などの情意的要因も含めた「非認知的能力」―忍耐力や社交性、自尊心など幅広い力や姿勢など――が人生における成功を左右する、ということが70年代の研究により明らかになっている。「非認知能力」形成において幼児教育は特に重要だ。
中教審答申では、「主体的・対話的で深い学び」について、「資質能力を育む」ことを絶えず念頭に置くこと、即ち「学びの在り方」を絶えず考えることが求めている。そのためには、学校や教員がまず自律的創造的になることが必要である。また、学び全体を個別にではなく、俯瞰する必要がある。例えば農業、工業、商業という個別の学びのみではなく「産業」として学ぶことが求められている。
実験や観察の際には、ミスが起こる可能性も含めたうえで実験結果を考え、実測値と理論値は違うこと、誤差の在り方も含めて学ぶ。
深い学びとは意味のある学びであり、意味のある学びとは、子供が持つ知識経験と関連付けた学びである。その知識は、様々な対象との対話によって刷新し続ける。
「対話的な学び」とは、形式ではなく「知識感」の転換だ。これに取り組んでいる学校は、学力テストB問題の成績が明らかに高い。これらの学びを推進するうえで、ICTはよいサポーターになる。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年4月2日号掲載