2月2日、福岡市のパピヨン24ガスホールで第46回教育委員会対象セミナーが開催された。また2月15日、名古屋市の名古屋国際センターで第47回教育委員会対象セミナーが開催された。各講演の内容を紹介する。次回の第48回教育委員会対象セミナーは、3月24日に金沢市の金沢商工会議所で開催される。
鹿児島市立学習情報センターの木田博主幹は、市のICT機器の整備状況やICT機器を活用した授業実践について報告した。
市の小学校、中学校、高等学校の全普通教室に50インチ型のデジタルテレビ、無線LANのアクセスポイント(AP)、タブレットの画面を転送しリアルタイム表示できる無線画面配信装置、児童生徒用ノートPCが数台、2in1型のタブレットPC1台が配備されている。
各小学校、中学校のPC教室にはタブレットPCを40台ずつ配備。キーボード付きで、タイピングの練習等ができる。特別教室を中心にタブレットPCを5~11台、電子黒板を1校当たり2・7台導入している。今年度は児童生徒用として、タブレットPCを各校に10~230台配備する。
特別支援学級と通級指導教室には各教室にiPadを2台配備。市の教育用PC1台当たり平均の児童生徒数は2月末時点で2・1人となった。文部科学省が示している「普通教室のICT環境整備のステップ」において、市は主体的、対話的で深い学びの実現に適した環境であるStage3の整備内容だ。
ICT機器の整備は、安定して動くこと、各校に広く配備するために安価であること、簡単で機能がシンプルであることが望ましい。活用には安定した無線環境の実現が重要。教室で一度に40台の端末が安定稼働できる機種を選ぶ必要がある。APは常置式がいい。必要時だけ移動式を使えばいいと考えがちだが、手間がかかると教員は使わない。うまく設定できないこともある。
トラブルを把握しやすいように集中管理できること、不正侵入させない安全な環境等も欠かせない。また教員が使いづらさを感じないために、遅延のないリアルタイムでの画面転送や、誰でも簡単に使えて授業ができること等が大事だ。
ソフト面もハード面と一体的に整備することが必要だ。市内の小学校、中学校、高等学校からアクセスできる教育委員会のポータルサイトから、小学校の全学年分をそろえた国語、算数のデジタル教科書を活用できる。また教員が作ったデジタルコンテンツは千点以上。ICTを活用した授業動画や機器、ソフトウェア等のマニュアル動画を見ることができる。
これまでの授業では教員のみがICTを活用していたが、今後は児童生徒も活用する問題解決型で協働的な授業が増えていく。基本的な操作方法さえ確認したら、子供たちと一緒に問題解決をしていくような活用でもいいと思っている。
これからの教員は、児童生徒の問題解決を支援促進し、問題意識、学習意欲を高め、学問体系を実態に応じて理解可能なレベルに変換することが求められる。
木田氏は実際の授業での活用事例を紹介した。小学校2年生の算数、はこの形になる面のつなぎ方を考える授業で、子供たちは1人1台のタブレットPCで展開図の写真を撮って教員に送信し、デジタルテレビに映った一覧を見て他の子供の答えを確認した。作業の中で、どう撮ったらよく見えるかを自分たちで話し合う様子もある。
中学校2年生の数学、連立方程式の授業。子供たちはグループに1台タブレットPCを使い、自分たちの考えをまとめて写真を撮り、教員用PCに送信する。教員は各グループの考えをまとめ、写真を撮って送り返す。他のグループがどんな考えをしているのかをグループで話し合いながら学んだ。
発表用ホワイトボードに考えをまとめ、黒板に貼る代わりに、タブレットPCで写真を撮って全員に送信することで、より長く話し合いの時間を取ることができる点が、タブレットPCを活用する最大の利点だ。
プログラミング教育への取組としては、ロボットを使ったプログラミング教材を各学校に10セットずつ配布している。ポータルサイトにプログラミングのコーナーを作った。自由に使えるようにしている。
また、鹿児島大学工学部と連携して大学生・大学院生が小学校でプログラミングの出前講座も実施。教員のプログラミング研修も進めているところだ。
【講師】鹿児島市立学習情報センター・木田博主幹
【第46回教育委員会対象セミナー・福岡:2018年2月2日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年3月5日号掲載