東京都・墨田区教育委員会(小学校25校・中学校11校)では、平成25年度、7校に各40台のタブレット端末を導入。スムーズに活用が進んでおり、未整備の学校からは催促されているほど、ICT活用に前向きだ。この理由の1つが、区で継続して実施している「ICTマネジメント研修」ではないかと考えている。
財政事情が厳しい中でもICTの整備を継続的に検討しており、更に整備が進んだ時にすぐに学校現場で活用できるようにしておきたいと考えていた。
スムーズな活用には、管理職のリーダーシップ、更には、ICTリーダーや主幹教諭のリーダーシップが必要。そこで3年前から、JAETが提供する「管理職のための戦略的ICT研修」を実施した。英国の教員研修を日本の教員向けにJAETが開発したもので、主な内容は講演、活用事例の紹介、グループワークなど。中でも重要なのがグループワークで、「自分の立場を明確にし、その立場で何をすれば今より一歩進むことができるのか」を意識化することが主要なテーマ。たとえば、同じ整備内容でも活用頻度が学校によって異なるのはなぜか。KJ法を用い、課題の解決には何をすべきか、話し合いながら解決に導く。この研修により、それぞれの学校に戻って何ができるのかも考える。
平成23〜24年は校長・副校長、ICTリーダーを対象にしていたが、学校運営には教務主任等の理解が欠かせないことから、25年度はさらに主幹教諭も悉皆研修とした。主幹教諭を入れることで30%を超える教員がこの研修を受けている学校もある。継続した取り組みによって、情報化やICT活用を経営戦略として考える視点が管理職に生まれ、学校全体としても共有意識が育まれ、建設的な話し合いが増えたと聞いている。
タブレット端末整備に至った経緯は、区独自調査の分析がきっかけだ。
フロアに1台整備した電子黒板は、9割以上の教員が活用したいと考えているものの、日常的な活用は実際には2割程度。本来は普通教室にICTを常設することが望ましいと考えているが、予算に限りがある中、今何ができるのかと考えた結果、PC教室の更新の際にデスクトップPCからタブレットに変更し、普通教室でも活用できる環境整備に着手。40台のピュアタブレットにキーボードとマウスを附属させ、これまでのPC教室と同じ活用ができるようにした。端末は、協働学習で使う際にはある程度の大きさも必要と考え、12・5インチ。これにあわせ、プロジェクター、無線AP、スクリーンを整備。整備後数か月で、約6割の学校が普通教室で活用するようになった。
ICTマネジメント研修とハード整備は車の両輪。効果的な活用のためには、管理職、主幹教諭、ICTリーダーがきちんとしたビジョンを持つことがキーになる。
(講師=庶務課 教育情報担当主査・宮崎隆氏/教育情報担当・渡部昭氏)
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