品川区(小学校31校・中学校9校・小中一貫校6校)では、平成12年から教育改革「プラン21」に取り組んでいる。
「プラン21」の実践において教員を後方から支援するため、グループウェアを平成17年に、出退勤システム、文書管理システム、財務会計システムを平成19年に、校務支援システムと介助員システムを平成20年度に導入した。
予算を確保するためには通常、費用対効果の提示が必要だ。しかし校務支援システム導入による費用対効果を示すことは難しい。
そこで、転勤などで担当者が変わっても継続でき、重複した仕事を削減できるシステムの導入により、教員がどれくらい子どもに目を向ける時間が増えるかという視点で財政当局に予算を申請。日に4時間程度の校務関連の業務の時間短縮を図るシステムを念頭に構築・導入を進めた。
中でも最も苦労したのが通知表の統一だ。検討委員会では、すべての通知表を集め、180種類以上の様式を評価評定の方法に分けて5種類に分類。前・後期制、3学期制があることから計10種類に統一した。どんなに良いものであっても、統一できなければ継続が難しくなると考え、各校の独自仕様は認めないこととした。
品川区では、電子化されたものも正式文書とし、すべての事務連絡通知はシステムで送付・決裁できる仕組みとした。これは使ってみると便利で、各学校にも利用が浸透している。
導入の際には業務内容を統一し、一部の教職員に業務が集中しないように配慮するなど、運用方法についても検討。転出入の処理は、ログイン時にトップ画面で学校側の処理も教委側の処理も全てが確認できる。決裁する書類も分かる。また、担当職員が休みの場合も処理がどこまで進んでいるのか把握できるので、一時的に上位ルートへ引き上げて続きの処理などもできる。
その結果、校務にICTを活用できる教員の割合が増えるとともにウィルス検知件数も減少した。また、通知・調査・報告等の迅速化を図ることができた。
通知表の学年表記は1年から9年まで。1年からの「英語科」や区独自教科「市民科」も記入できるようにしている。小中一貫校は1校として成績管理ができるようにしており、小中一貫校の給食メニュー、給食費の管理もできる。
学校現場の監査も行う
情報の安全管理は、品川区全体の運用規定、学校の運用規定、システムごとの運用規定がある。さらにシステムごとにアクセス権を設定。各システムの管理者が管理し、指導要録や通知表は、システム管理者は見ることはできるが、入力や変更はできない設定だ。端末ごとに操作ログも記録している。
さらに各学校では校長が、情報の安全管理研修を全教員対象に行う。eラーニングによる悉皆研修も実施。未受講者はいない。ウイルス関連の事故は着実に減少しており、情報セキュリティ研修の効果を感じている。
情報セキュリティにおける学校現場の監査も行っている。
監査員は、教育委員会の担当と区長部局が担当し、ローカルルールが通用しない仕組み。
グループウェアのメール機能や回覧機能で、会議の時間短縮にもつながった。この時間を帯の時間に活用している学校が増えた。
これら取り組みの成果は、校務でICTを活用できる教員が増えたこと。現状8割程度で、これを100%に押し上げていく仕組みと学校環境整備が今後の課題だ。
(講師=学務課校務情報管理対策担当主査・柏木通氏)
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