第14回教育委員会対象セミナー 東京
11月20日、教育家庭新聞社は第14回教育委員会対象セミナーを東京都内で開催し、全国から多数の教育委員会が参集した。文部科学省・学習情報課の豊嶋基暢氏は、教育の情報化に関する国の方針について説明。「校務支援システム」については品川区と小牧市が、ICT活用については墨田区と綾瀬市が事例を紹介した。
2013年6月には3つの閣議決定がされており、教育の情報化においても大きな動きがあった。
1つは「世界最先端IT国家創造宣言」。
日本の一番の武器は人材であり、その人材の育成において、文科省として教育環境のICT化に取り組むことが盛り込まれている。2020年の東京オリンピック時には、あらゆる学校での教育の情報化を実現したい。
また、ICTの活用とは、ネットワークの活用とも言える。クラウド化によってコストダウンを図るとともに、学習履歴を含め、情報をつなぎ合わせる仕組みが求められている。そのための個別の施策を講じていくことが必要と考えている。
次に、「日本再興戦略」。
これは政府全体の政策のコアになるべきもので、世界最高水準のIT社会の実現のため、ハイレベルなIT人材の育成・確保の推進が掲げられ、その施策の1つとして、ICTを活用した21世紀型スキルの習得のため、1人1台の端末整備やデジタル教材の普及を進めていくことが盛り込まれている。
3つめが、「第2期教育振興基本計画」。
「確かな学力の定着」や「学習意欲の向上」などを目的とした各教科におけるICT活用を普及させることが掲げられている。基礎的な知識の習得は、理解力・判断力を育むために必要なこと。1つの答えが必ずしも存在するわけではない今、場面に応じて答えを模索できる力、知識の裏付けの上で自分の意見を考え、高めていく術を、早期から磨いていく必要がある。それが「確かな学力」であると理解している。これらを上手く引き出せる形でICTを活用、技術の進展に合わせて上手く利用して、本来高めるべき力の育成効果を図っていきたい。
また、デジタル教材の質の保証を高めるため、第三者的な評価も必要であるという声を受け、来年度中に評価システム作りに着手したい。
研修の充実で 指導力を向上
教育の情報化における地方財政措置は約1670億円が毎年講じられている。その活用は自治体判断にゆだねられているが、予算要求で地方財政措置をしている立場としては、目的に添った形での活用が望まれる。
秋の行政事業レビューでは「整備を進めてもICT活用力のない教員ではもてあます」と強く指摘を受けた。学校における教育の情報化の実態等に関する調査でも「研修の受講割合が高い自治体ほどICT活用が進んでいる」という相関関係が見られる。全国の教育の情報化環境の整備と同時に、教員の指導力を高めることは、教育の情報化の目的を達するための重要な要素である。
併せて、児童生徒の情報活用能力の育成も求められており、現在、小・中学生を対象としてコンピュータを用いた調査も実施しており、この結果も踏まえて、教員の指導力向上を図る必要がある。また、最近、児童生徒のネット依存やネット犯罪などが社会問題となっており、今年度、それらの課題に対応した教員向け指導手引書を作成しており、年度末に取りまとめる予定である。
さらに、平成22年度から実施している学びのイノベーション事業は、今年度事業最終年度に当たり、ICTが整備された環境におけるデジタル教材等を活用した教育の効果や、指導方法の開発など実証研究の成果を、年度末に公表する予定である。実証校での授業の様子を見ると、考え方やイメージが変わったという声も聞く。このような成果を広く全国に普及するとともに、ICTを活用した新たな学びを推進するための課題を整理し、しっかりと教育の情報化の推進に努めていく。
(講師=文部科学省生涯学習政策局学習情報課課長・豊嶋基暢氏)
【第14回教育委員会対象セミナー東京】
【2014年1月1日】
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